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源実朝の暗殺を止められなかった陰陽師は「一斉解雇」されていた!─呪術って本当に効果があった?─

今月の歴史人 Part.3


呪術は古代から日常的に行われていたというが、そもそも効果があるものなのだろうか。


 

■呪術の効果がなく罰せられることも

 

源実朝
偉大な父・源頼朝、兄・頼家の跡を継ぎ、3代目の鎌倉将軍となった実朝。就任当時、幕府内では権力闘争が繰り広げられており、政権内は不安定であり、呪術に頼る部分もあったのかもしれない。(国立国会図書館蔵)

 

 呪術に効果があったか否かの判別は難しいが、戦勝祈願にしても疫病退散、道中安全にしても、「まじない」が無効だったとして呪術師が罰せられた例、信用を失い社会的に抹殺された例は極めて稀だった。

 

 しかし、依頼主が絶対的な権力者であれば話は別である。鎌倉幕府が編纂(へんさん)した歴史書の『吾妻鏡』
1216年閏6月24日条には陰陽師が誤りを犯し、政所別当の大江広元(おおえひろもと)から処分された一件が記されている。

 

 時に幕府は密教験者の忠快(ちゅうかい)に除災の修法を行わせることを決め、陰陽師の安倍親職(あべのちかもと)と安倍泰貞(あべのやすさだ)に適切な日を選ばせたところ、2人とも7月中から3つの候補日を選び出した。

 

 ところが、当の忠快がこれに異を唱えたため、政所に判断が委ねられた。判断基準は不明ながら、大江広元は陰陽師の誤りとして、親職と安貞に出仕の停止を命じたというもの。

 

 同じく『吾妻鏡』の1219年2月20日条には、後鳥羽上皇が3代将軍・源実朝(みなもとのさねとも)の祈祷に専念させていた陰陽師たちをいっせい解雇したとの記事が見える。暗殺を阻止できなかったからだが、果たして彼らの過失と言えるのかどうか。

 

『吾妻鏡』で大江広元が安倍親職と安倍泰貞の出仕を停止した記述
「是陰陽道之誤也 可止出仕之由依被仰下~(これ陰陽道の誤りなり。出仕を止むべきの由仰せ下さるに~)」とある。これ以外にも『吾妻鏡』には陰陽師に関する記述が多数ある。(国会図書館蔵)

 

監修・文/島崎晋

歴史人2023年6月号「鬼と呪術の日本史」より

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