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安城ゆかりの三河武士─徳川家臣団の中心となり家康を大名・旗本として支えた忠臣たち─

安城松平家発祥の地!徳川家康ゆかりの「安城」をめぐる【第3回】


司馬遼太郎いわく〝安城〟(あんじょう)という地は「徳川家にあっては、これはただの地名ではなく、名誉と自負心と忠誠心を象徴する神聖語」であるという


 

愚直な安城武士たちの結束力とその強さ

 

東照宮十六善神之肖像連座の図
徳川十六神将の絵。ここには酒井忠次や蜂屋貞次など安城ゆかりの武将がおり、いかに長きにわたり家康を支え続けたかを物語っている。(刀剣ワールド財団蔵)

 

 主家に対し、代々臣従してきた家臣の家を譜代という。家康の場合、関ヶ原(せきがはら)の戦い前後までに臣従した家臣を譜代と呼んでいる。ただし、臣従した時期には隔たりがあり、なかでも家康が三河にいたころから臣従していた家臣を三河譜代という。

 

 これをさらに細かく分類すると、大久保彦左衛門(おおくぼひこざえもん)の著した『三河物語』によれば、安城譜代・山中譜代・岡崎譜代に分かれるのだという。要するに、松平氏が安城城を本拠にしていたころに臣従していた家臣が安城譜代、その後、山中城を攻略したころに臣従した家臣が山中譜代、岡崎城に拠点を移してから臣従した家臣が岡崎譜代ということになる。

 

大久保彦左衛門
幕臣として徳川3代を支えた彦左衛門は『わが家は安城以来の旗本』を口癖としていたという。(国立国会図書館蔵)

 

本多正信
家康の名参謀として知られる正信は安城出身とされ、三河時代から支える忠臣である。(加賀本多博物館蔵)

 

 三河譜代としてはいずれにも違いはないのだが、そのなかでも、安城譜代は最古参の家臣ということで別格とみなされていたらしい。ちなみに、この安城譜代とされているのは、徳川四天王に列される酒井氏、本多氏をはじめ、石川氏・大久保氏・内藤氏・阿部氏・青山氏・植村氏・平岩氏・成瀬氏・渡辺氏などである。

 

 安城譜代の家臣は、家康の祖父・松平清康の時代から、松平氏と興亡をともにしてきた。困難な時代も裏切らずに臣従してきたという歴史を、家康は高く評価していたのだろう。家臣団の結束をなによりも重視した家康は、安城譜代の家臣を重用している。そして、江戸幕府が開かれてからは、その子孫を藩主に取り立てたり、あるいは、藩主とした自らの子の付家老に取り立てたのだった。

 

【安城市と徳川家康ゆかりの地】

 

徳川家康
遺訓のなかで「心に欲が起きたときは苦しかった時を思い出すことだ」と語る。三河から苦労を重ね天下人となった偉人の重い言葉である。(刀剣ワールド財団蔵)

 

丈山苑

 

愛知県安城市和泉町中本郷180-1

 

安城生まれで江戸初期に活躍した武士・文化人として知られる石川丈山の生誕地を整備し、和風庭園と書院を配した「丈山苑」。丈山は徳川家康の近侍として信頼を寄せられた武士であったが、隠棲後には文化人としても才能発揮。京に建てた詩仙堂などはこの時代の代表的な建物として評価されている。丈山苑の唐様庭園、蓬莱庭園、回遊式池泉庭園は「本当の静けさ」を醸し、風雅を楽しむことができる。

 

大岡白山神社

 

愛知県安城市大岡町宮東43

 

社殿は天文2年(1533)、徳川家康の祖父・清康によって建立された。清康に従った家臣団とその家族が、出陣に際して、祈願したと伝えられる松平氏ゆかりの神社である。天文9年に織田軍の兵火により焼失してしまったが、永禄10 年(1567)、家康によって再建され、現在は安城最古の建造物となっている(写真の社殿)。慶長9年(1604)に家康に社領138石を寄き 進しんされ、安城の歴史を今に伝える神社としてそびえる。

 

安城市観光協会公式HPでは「徳川家康公に関する特設サイト」を開設しています。
http://kanko.anjo-tanabata.jp/ieyasu/

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小和田泰経おわだ やすつね

大河ドラマ『麒麟がくる』では資料提供を担当。主な著書・監修書に『鬼を切る日本の名刀』(エイムック)、『タテ割り日本史〈5〉戦争の日本史』(講談社)、『図解日本の城・城合戦』(西東社)、『天空の城を行く』(平凡社新書)など多数ある。

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