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【生駒騒動】譜代家臣 VS 新参の権力闘争!典型的な御家騒動の結末とは?(生駒藩/香川県)

江戸時代の「御家騒動」事件簿 【第1回】生駒騒動(生駒藩/香川県)


江戸時代に全般を通してのべ500藩が存在。藩内には新旧家臣同士の対立、当主の家督相続争いなど、数多くの御家騒動の原因が存在した。ここでは江戸時代の代表的な御家騒動をクローズアップ。その経過と事件の背景を浮き彫りにしていく。


 

生駒藩のような新旧家臣団の対立は、江戸時代の御家騒動の最も代表的なパターンといえる。さらに国元の家老と江戸詰めの家老との対立なども、御家騒動の要因となった。イラスト/永井秀樹

 江戸時代を通じて北海道・松前(まつまえ)藩から九州・薩摩藩まで日本列島各地の諸藩で御家騒動があった。その数は70数藩に上り、中には騒動の結果、御家取り潰しにあったり、減封(げんぽう)されての国替えなど、過酷な処置を受けた藩もあった。御家騒動の中身は、お家乗っ取りを巡っての重臣同士の争いから、派閥による陰謀、主君や重臣の暗殺、敵討ちまで、多岐に渡った。そして、そうした御家騒動は、歌舞伎や講談などでデフォルメ化して語られ、劇化され、庶民の知るところともなった。伊達(だて)騒動、鍋島(なべしま)騒動などが代表的な騒動として知られる。70数藩の御家騒動の中から、興味深い争いをピックアップした。

 

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 生駒(いこま)騒動は、典型的な新旧の勢力争いによる御家騒動である。「新参衆(しんざんしゅう)」の専横に危機感を抱いた「譜代衆(ふだいしゅう)」の主導権争いが発端となり、戦国時代からの名門・生駒家は破綻に近い運命を辿ることになる。生駒氏は、大和・生駒が出身地で戦国時代に尾張に移った。藩祖・生駒親正(いこまちかまさ)は織田信長、豊臣秀吉に仕え、讃岐・高松城主6万1千石となり、関ヶ原合戦では東軍・徳川家康に属して17万石に加増されていた。

 

 2代・一正(かずまさ)の正室は、外様ながら徳川家康に最も信頼されていた藤堂高虎(とうどうたかとら)の娘であり、高虎と藤堂家が生駒家の後見人のような形になっていた。そして、4代・高俊(たかとし)の時代に問題が起きる。

 

 高虎の信頼を得て2代・一正の側用人になっていた前野助左衛門と石崎若狭という生駒家にとっては「新参者」が江戸藩邸を中心に藩の実権を握ろうとした。生駒藩の実質的な政事の中心は、国家老・生駒将監(しょうげん/3代・生駒正俊の妹婿)、仕置家老・生駒左門(正俊の弟)の生駒一族と老臣である森出羽、上見坂勘解由であった。

 

 しかし、新参衆(前野・石崎)は、老臣(森・上坂)の2人を取り込んで、勢力を拡大していった。後見人の藤堂高虎も新参衆と老臣に利用され、前野・石崎を江戸家老とし、森・上坂も江戸詰とした。こうして生駒家は、江戸派(新参家老)と国許派(譜代家老)に勢力が明確に分かれたのであった。

 

 その後、高虎が病死し藤堂高次(たかつぐ)が生駒家(高俊)の後見となった。時間は移る。生駒将監は病死し、子の生駒帯刀が後を継ぎ、実権を握っていた森出羽も病死して息子の森出雲が後を継ぐ。こうした中で、藩政に実権は完全に前野・石崎ら「新参衆」に握られてしまった。藩主・高俊は遊興に耽り藩政を顧みない。藩財政も困窮して領民は苦しむ。新参衆は、新規召し抱えを増やし、譜代家臣の中には退散する者も出た。 

 

「譜代衆」の焦りと苦悩は続くが藩主・高俊は相変わらずのまま。譜代衆は、徳川幕府に対して新参衆の悪事・行状19ヶ条の訴状を出した。藩主・高俊は、両者の和解を促すでもなく、譜代衆の行動を批判したたけ、新参衆の団結を促してしまった。寛永16年(1639)に幕府が江戸の評定所に両派の主だった者を集めて「裁判」が始まる。老中・大目付などが列席の上で幕府の裁決が下されたのは、翌年・寛永17年。

 

 判決は先ず「藩主・高俊は家中の仕置不取締りの罪として、生駒藩17万石を取り上げ、高俊は出羽国由利郡矢島で1万石をもっての配流」した。さらに「新参衆」前野・石崎・上坂・森出雲ら5人は切腹、死罪53人が言い渡された。譜代衆に死罪や切腹はなく、多くが録を減らされての大名預かりになった。新参衆の敗北であるが、生駒家は壊滅し、5千人が浪人になったという。

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江宮 隆之えみや たかゆき

1948年生まれ、山梨県出身。中央大学法学部卒業後、山梨日日新聞入社。編制局長・論説委員長などを経て歴史作家として活躍。1989年『経清記』(新人物往来社)で第13回歴史文学賞、1995年『白磁の人』(河出書房新社)で第8回中村星湖文学賞を受賞。著書には『7人の主君を渡り歩いた男藤堂高虎という生き方』(KADOKAWA)、『昭和まで生きた「最後のお殿様」浅野長勲』(パンダ・パブリッシング)など多数ある。

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