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戦艦「大和」沖縄への最後の出撃

沖縄戦と本土決戦の真実⑫

4月5日、天一号作戦が大和に伝わる

広島県呉市光町にある呉港の様子。敷地内には、戦艦「大和」を造船した旧呉海軍工廠造船部造船船渠大屋根が現存する(船渠=せんきょとはドックの意)。

 昭和20年(1945年)4月5日、「第一遊撃部隊『大和』、第二水雷戦隊『矢矧(やはぎ)』及び駆逐艦6は海上特攻として8日黎明沖縄に突入を目途し、急速出撃準備を完成すべし」との暗号電報が戦艦「大和」に届いた。本艦には第二艦隊司令長官・伊藤整一(いとうせいいち)中将が座乗し、聯合艦隊(れんごうかんたい)作業地・山口県三田尻沖で訓練と警泊を繰り返し、警戒態勢のまま待機していた。

 

 聯合艦隊の天一号(てんいちごう)作戦計画は、GF電令作第564A号として艦隊に伝わった。作戦内容は、

 

①第一遊撃部隊は警戒を厳にして内海西部方面にあって待機し、特令により出撃準備を完成する。

 

②航空作戦が有利な場合は、第一遊撃部隊は特令により出撃し敵攻略部隊を撃滅する。本作戦を「『天一号作戦』と呼称し、警戒並びに発動要領は『捷号(しょうごう)作戦』に準じ本職(聯合艦隊司令長官)之を下令す」

 

 とあった。遊撃部隊は航空戦の戦果に策応(さくおう)して水上決戦を企図する任務の名称であり、これは前年のレイテ沖海戦で生まれた「捷一号作戦」と同じ戦術だった。

 

 第一遊撃部隊の旗艦が「大和」であった。船体全長を縦にすると、東京都新宿にある都庁ビルをはるかに超える263m、最大艦幅は現代の40m道路に匹敵する38・9m、船体の深さとなるキールラインより最上甲板側線までは、6階建てビルに相当する高さ18・915m、さらに満載排水量7万2809トンの巨艦であった。

 

 世界最大の口径46㎝艦載砲を3連装した主砲塔も、3基9門搭載していた。我が国の大艦巨砲主義の象徴であった。

 

 当時、日本海軍では、軍艦を呼称する時にはその類別の何たるかを問わず「軍艦 ○○」と呼んでいた。その艦艇類別等級によれば、正式名称は「軍艦 大和」である。竣工当時の「大和」の年間維持費総額は340万5373円と計上されている。

 

 この費用は、その後の対空兵器の増備に伴う兵員増加でさらに増加。就役後の「大和」は主要要目・主要性能などを表示する書類上では、日本海軍の機密程度「秘」「軍極秘」区分の中でも最高の「軍機」に指定されていた。

 

 日本海軍将兵にとってまさに憧れの戦艦だった。

 

生きて帰ることのない必死必中の水上特攻

 

「急速出撃準備を完成すべし」との電文の1時間後、「大和」は沖縄の危機に対し、海上特攻隊として「沖縄突入作戦」を実行することになった。無電はこうだった。

 

「海上特攻隊はYマイナス1日、黎明時豊後水道出撃、Y日黎明時沖縄西方海面の突入、敵水上艦艇並びに輸送船団を攻撃撃滅すべし。Y日を8日とす」

 

「特攻」とは、再び生きて帰ることのない必死必中戦法である。

 

 大東亜戦争軍人軍属死没者賞賜(しょうし)内規は、(一)殊勲(しゅくん)、(二)勲功(くんこう)、(三)勲勞(くんろう)、功勞(こうろう)に分けていたが、特攻は無条件で武人の勲章である金鵄(きんし)勲章に値し、その対象となる「特旨」(必死必中の特別攻撃に成功した場合)であった。また、攻撃不成功だった場合でも「殊勲甲」に選出される栄誉であった。

 

「大和」が属する第一遊撃部隊は、「矢矧」および駆逐艦8隻とともに主要任務は「敵水上艦艇並びに輸送船団撃破」であったが、この他にも前路掃海隊と三十一戦隊(駆逐艦3隻)の主任務が「艦隊の対潜対空警戒」であった。

 

 第一遊撃部隊は出撃準備し、信号により「第一遊撃部隊 明日6日徳山回航の予定」と打電。6日、第一遊撃部隊は各艦別々に三田尻沖を離れ、徳山湾沖の錨地(びょうち/船が錨を下ろして停泊する場所)の岩島灯台の南南西、3・8㎞の地点に、『大和』を中心に集結したのだった。

 

監修・文/原勝洋

(『歴史人』2022年6月号「沖縄戦とソ連侵攻の真実」より)

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