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米軍にBAKA BOMBと呼ばれた桜花隊の特攻

沖縄戦と本土決戦の真実⑩

銃後では10代の少年が特攻要員に養成された

特攻碑公園(鹿児島県出水市)で展示されているプロペラ。出水市近海で漁網にかかったもので、機種については言及されていない。

 太平洋戦争の末期、フィリピンの奪還を許した日本は、次の主戦場は沖縄と判断した。米軍はそこに、日本列島上陸作戦の兵站(へいたん)を、いよいよ築くはずとにらんだのである。

 

 戦争そのものをまだ続けるつもりだった日本は、戦う兵士を増やし続けた。だが、歩兵ならちょっとした訓練を行うだけでも戦場に投入できるが、パイロットとなるとそう簡単ではない。

 

 そこで、中学4~5年生を相手にパイロットを募集し始めた。それが甲種予科練(こうしゅよかれん)だ。この制度そのものは早くからあったが、太平洋戦争が不利になってくると大増員した。さらに小学校高等科卒を対象とした制度も新設され、募集も行われた(乙種予科練/おつしゅよかれん)。

 

 航空隊ばかりではないが、下級の将校を速成するため、20歳以上の学業半ばの学徒も徴収した。これまで学徒というだけで20歳になっても徴兵していなかったのを、その特権を撤廃したのである。学歴は下でも歴戦の大先輩がつきっきりで訓練し、鍛え上げ、予科練卒のパイロットを指揮した。

 

 彼らのすべてが特攻要員ではなかったが、多くの若者を死地に追いやっていったのである。

 

 一方、沖縄に上陸しようとアメリカ軍が艦船を集中させていたころ、日本は当然ながら上陸させまいとして、特攻も含めた激しい航空攻撃を行った。相手にするのは米軍の大型空母13隻を中心に、戦艦8、巡洋艦11、駆逐艦64などの大艦隊(第58任務部隊、指揮官・スプルーアンス大将)である。この特攻は3月いっぱい続いた。

 

 また、特攻は必ずしも沖縄周辺だけではなかった。沖縄攻略のためウルシー環礁(カロリン諸島東北東、ヤップ島の約100㎞東北東)を出撃する米機動艦隊に向けても実施された。

 

 なお、この期間の3月21日には、桜花(おうか)と名付けられた人間操縦爆弾もはじめて出撃している。

 

 こうした準備的な特攻が一段落したころ、アメリカ軍は沖縄に上陸を始めた。まず、周辺の小さな島へ上陸し、沖縄本島への上陸は4月1日のことだった。

 

フランクリン撃破という戦果はあげたものの…

 

 本格的な沖縄特攻に先立つ3月の特攻で、アメリカ軍に与えた損害は決して小さくはなかった。その中でも、3月19日に行われた空母「フランクリン」への特攻は、特筆すべきものだった。撃沈こそできなかったが、大損害を与えて戦場に二度と戻れないほどの大ダメージを与えたのである。

 

 この特攻では特攻機が艦橋に激突した(写真も残っている)。また、この他にも急降下爆撃機が甲板に2発命中させている。

 

 フランクリンの甲板には約30機が並んでいたが、燃料に次々と引火爆破し、さらには搭載していた爆弾が大爆発して大火災が起こった。必死の消火活動で火災は食い止められたが、空母は約10度傾斜し、多くの戦死者が出た。約700〜800人が戦死・行方不明となり、後年、「太平洋戦争中、最も悲惨な被害」とまで言わしめた。

 

 特攻兵器「桜花」の出撃も行われた。これは人間操縦爆弾ともいわれた。爆撃機に吊り下げ、敵艦を見つけると、高度3000mあたりで切り離し、9秒間ロケット噴射で降下、その後は人間が操縦して体当たりさせるという兵器だ。

 

 3月21日の初出撃では桜花隊は全滅したが、その後も桜花は出撃した。しかし、体当たりに成功したのは、わずか1回限りだったとされている。この兵器にアメリカ軍はびっくりしつつも、皮肉を込めて「BAKA BOMB」と名付けた。

 

 日本を空襲するために飛来するB29重爆撃機に対する体当たりも実施されたが、これも成果はごく一部であった。

 

 B29の背後から迫り馬乗りになって攻撃したり、無線で「ただいまから体当たり!」と予告して敢行するなどの話も残っている。

 

監修・文/森山康平

(『歴史人』2022年6月号「沖縄戦とソ連侵攻の真実」より)

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