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北方領土問題の発端をつくったソ連の樺太侵攻とは何だったのか⁉

今月の歴史人 Part.3


太平洋戦争末期、米軍によるアリューシャン方面への攻撃を予想していた日本軍は、千島防衛に重点を置いていたため、樺太には戦車も戦闘機も配備していなかった。その虚をついたソ連軍第2極東方面軍は南樺太に進軍を開始する。今回は、満洲侵攻に続く樺太への侵攻を受けた日本軍の実態を解説する。


 

虚を突かれた日本軍とソ連の樺太侵攻
満洲侵攻の補助的作戦だった南樺太侵攻

 

兵力 兵器 死亡者数
日本 第5方面軍
○樋口季一郎司令官 第88師団
○師団長・峯木十一郎中将 国民義勇戦闘隊
四一式山砲
九四式三十七ミリ速射砲 九六式機関砲
九二式重機関銃 他
日本軍 700〜2,000人
民間人
3,500-3,700人
ソ連 第2極東方面軍
○ブルカエフ大将
○第16軍 チェレミソフ少将
T34/85(戦車) PPSh41(短機関銃) カノン砲
ミグ3型戦斗機 他
ソ連軍
1,191人以上

 

日本の第88師団司令部が置かれた樺太庁博物館(『樺太年鑑』より) 昭和20年(1945)、本土決戦に備えて樺太に第88師団が設置され、 北方を担当する第5方面軍に編入された。師団長には、前身である樺太混成旅団長の峯木十一郎中将が就任した。(国立国会図書館蔵)

 

 ソ連が日本との国交断絶を通告した昭和20年(1945)8月8日の翌9日午前0時、満洲進攻が開始された。同日の早朝には樺太でも武意加の国境警察がソ連軍の襲撃を受け、巡査2名が戦死した。これがソ連軍による最初の攻撃である。その直後には向地視察隊日の丸監視哨が砲撃された。北方方面を管轄する札幌の第5方面軍隷下にあった豊原の第88師団がソ連の対日参戦を知ったのは9日の午前7時であった。

 

 ソ連軍による本格的な樺太進攻は、2日後の11日から始まった。ソ連軍の対日戦争は、満洲作戦が主であって、樺太作戦は従の関係にあったため、満洲作戦の進捗度に影響を受けていた。満洲作戦は、沿海州方面(第1極東方面軍)から始まり、激戦となった一方、機械化部隊を中心に西部方面から進攻したザバイカル方面軍による軍事作戦は予想以上に進展した。そのため、11日になって、極東方面軍最高司令官ワシレフスキーは、満洲作戦の補助的役割を与えられていた第2極東方面軍司令官ブルカエフに対して、ただちに樺太へ進攻を開始し、22日までに作戦完了することを命じた。これを受けて樺太方面では北緯50度線の国境を越えて北樺太から第59狙撃軍団による進攻が開始された。

 

 ソ連軍の樺太進攻に直面した第5方面軍は、もともとアリューシャン方面から米軍が進攻することを想定した部隊配置を行っており、樺太よりも千島防衛に重点を置いていた。そのため樺太には戦車も飛行機も無く、第88師団(約2万人)とソ連軍とは兵員差でも4倍近い開きがあった。しかし、ソ連軍は第88師団の頑強な抵抗に加えて情報不足による混乱も合わさって進撃が遅れ、15日に玉音放送が流れた時点では、国境に近い北部での戦闘にとどまっていた。

 

 

戦闘終結と 千島列島の完全占領

 

樺太庁舎(『樺太年鑑』より) 樺太庁は南樺太を管轄する行政官庁。日露戦争中に開設された樺 太民政署を明治40年(1907)に解消して設置。昭和20年(1945) にソ連が樺太全土を支配下に置いたため機能を喪失。(国立国会図書館蔵)

 

 満洲と同じくソ連軍の攻撃は15日以降も続き、18日にようやく北部の要地である古屯を中心とした防御線を突破した。その後は日本軍の抵抗を受けることなく南進を続け、当初の作戦完了目標とされた22日に知取町で第88師団との停戦合意にこぎつけた。日本軍とソ連軍との戦闘はこの日をもって終結し、日本軍部隊の武装解除が各地で行われたが、その後、千島の部隊とともにシベリアに抑留された。

 

 なお、北千島については、18日にはカムチャッカ半島との国境に位置する占守島に対してソ連軍(約9000人)の上陸作戦が行われ、第91師団を中核とする日本軍(約2万5000人)とのあいだで激戦が繰り広げられた。北千島での戦闘は日本軍が優勢であったが、21日に停戦が取り決められ、23日に武装解除が完了、8月末までにウルップ島以北の千島列島を無血占領した。

 

監修・文/加藤聖文

『歴史人』6月号沖縄戦とソ連侵攻の真実より)

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