【ランキング】司馬遼太郎の長編小説で好きな作品は?
司馬遼太郎原作の話題の映画『峠 最後のサムライ』が公開中です。歴史小説の大家・司馬遼太郎の作品で歴史好きになったという人も少なくないことでしょう。今回のアンケートは、「司馬遼太郎の長編小説のなかで、好きな作品は何か」について集計。372票の投票から、第5位から第1位までを発表します。 <総票:372票 男性:女性=8:2>

太平洋のはるか彼方を見つめる坂本龍馬像。地元・高知県の青年有志の募金活動によって建立されたこの銅像は、高知市浦戸の桂浜公園内にある。
第5位 「関ヶ原」 投票数:24票
第5位は24票を集めた「関ヶ原」。東西両軍の兵力十数万人という天下分け目の決戦を描いた、司馬遼太郎の代表作の一つです。週刊サンケイ誌で1964年から1966年まで連載。
「この三成あるかぎり、ゆめゆめ家康めに大権をぬすまれるようなことは致しませぬ」と語った石田三成(いしだ・みつなり)。秀吉の死後、豊臣政権を簒奪せんと謀略をめぐらせる徳川家康との間で対立は始まります……。戦の起因から終結まで、戦国武将たちの心理戦や人間像が浮かび上がってきます。
「テレビドラマにも映画にもなっていて、私のなかで”関ヶ原”はこの小説が基礎になっています」という50代、60代の男性の声が多く寄せられました。また、「石田三成と大谷継吉(おおたに・よしつぐ)の固い友情に感動しました」など、登場する戦国武将たちの深い人間関係も大きな魅力となっているようです。
第4位 「国盗り物語」 投票数:33票
5位に9票差を付け、33票で第4位となったのは「国盗り物語」。1963年から1966年まで「サンデー毎日」誌で連載され、美濃国・斎藤道三(さいとう・どうさん)と隣国・尾張国の織田信長(おだ・のぶなが)を描いた作品です。
「貧しい油売りから国主となった斎藤道三のイメージが、この小説で強烈に焼き付けられました」「戦国の革命児・道三がカリスマ・信長よりも、人間くさくて面白い」と男性も多く、道三や信長の人物像に心奪われた読者の票が集まりました。
また「この小説が中心となって描かれたNHK大河ドラマ『国盗り物語』(1973年)がきっかけで、この小説を読みました。以来、戦国時代の歴史小説ファン。本能寺での信長と明智光秀(あけち・みつひで)の対比にシビレます」とドラマ性に魅了された女性も多くいたようです。
第3位 「燃えよ剣」 投票数:36票
第3位は、4位「国盗り物語」に僅差の36票の「燃えよ剣」。幕末の動乱期に活躍した新撰組副長・土方歳三(ひじかた・としぞう)の生涯を描いた名作。1962年から1963年に「週刊文春」で連載されて以来、映画・ドラマ・舞台など数々のメディアや多くの作品で翻案されてきました。
武州石田村の百姓の子”バラガキのトシ”は、当時、最強といわれた新選組という組織を作りあげ、池田屋事件でその名を轟かせることになり、幕府からも一目置かれる存在にします。しかし、その後、大政奉還で幕府は事実上、消滅するのを契機に運命は大きく変わります。鳥羽伏見の戦いに破れ、ついに函館・五稜郭で最期を覚悟することになるまで、同作品では剣に生き、剣に死んだ男の頑で華麗な人生が描かれています。
新選組の小説といえばこの作品を思い浮かべる人、またこの作品で土方歳三ファンになったという人も少なくありません。
票を投じた人たちが特に感動した場面として、「五稜郭で最後、土方が突撃する」シーンや「お雪であろう小柄な婦人が、称名寺を訪ねる」ところを挙げる人が多くいました。皆さん「もう、ただただ涙が止まらない……」と感動の深さを綴ってくれました。
第2位 「坂の上の雲」 投票数:69票
第2位は、人気作品「燃えよ剣」に30票以上の差をつけた「坂の上の雲」。
明治維新を経て近代国家の仲間入りをした「明治日本」が舞台です。小国・日本が近代国家の体制を整え、眠れる獅子と恐れられた清との日清戦争を経て、ついに日露戦争で大国・ロシアを破るまで三十年あまり。司馬遼太郎が”楽天的な時代”と評した時代です。
東郷平八郎(とうごう・へいはちろう)の参謀で、日本海海戦でバルチック艦隊を破った秋山真之(あきやま・さねゆき)と、その兄で日本騎兵を育てた秋山好古(あきやま・よしふる)、そして近代俳諧の基礎を築いた正岡子規(まさおか・しき)ら、”楽天家たち”が、前だけを向いて歩いていく生涯が生き生きと描かれています。
「日本海海戦は、小国・日本が、大国・ロシアに勝利した日露戦争を決定づけた艦隊決戦。歴史上で象徴的な意味も感じる史実と、登場人物の人柄が融合。歴史を身近に感じることができる名作」「この小説を通して、明治国家という新しい組織の苦労が良くわかった」などと熱いコメントが寄せられています。
第1位 「竜馬がゆく」 投票数:81票
そして第1位は、2位の「坂の上の雲」にさらに9票の差を付けた「竜馬がゆく」。司馬文学の金字塔ともいわれる同小説は、総発行部数2500万部超のベストセラーです。
1962年から1966年にかけて産経新聞夕刊に連載。幕末維新史上の奇蹟ともいわれる坂本龍馬(さかもと・りょうま)の劇的な生涯を描いた歴史ロマンであることは、ご存じの通りです。
「初めて読んだ歴史大作。何回読んでも、心動かされます。私の人生のバイブルです」「若い頃、この作品を読んで影響を受けなかった人がいるだろうか? 大人になってフィクションだと知ってからも、この作品の感動は色褪せません」と、熱いコメントとともに多くの人が同作品に票を投じました。
また、「龍馬の人間性に惚れています」という声とともに、「日本を今一度、せんたくいたし申候」「人間というものは、いかなる場合でも好きな道、得手の道を捨ててはならんものじゃ」などの名言が心に刻まれているという人も男女問わず多くいるようです。
(アンケート…メールとハガキで集計。総票数:372票)