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保存目的で立入禁止になった古墳が崩壊する理由とは?

[入門]古墳と文献史学から読み解く!大王・豪族の古代史 #052


古墳が1700年ものあいだ、その姿を維持することが出来た理由のひとつとして、周囲の住民の生活に利用されてきたことが挙げられる。しかし、なかには大事にされず、気付かれていない古墳も多く存在した。今回は残された古墳と失われた古墳の両方について考察する。


 

市町村に管理を任されている古墳の保存問題

墳丘裾部が周濠の水の浸食で崩壊しているという大仙古墳(伝仁徳天皇陵)フォトライブラリー

 現在、宮内庁が管理していて立ち入りが禁止されている古墳の中には、雑木が繁茂し太い根が古墳深部にまで入り込み、台風で大木が倒れることによって、墳丘を破壊して根っこからひっくり返ってしまっているものもあります。そして、その被害の修復もできていないため、貴重な歴史遺産が徐々に壊れている状況ともいえます。

 

 また、周濠の水による古墳の裾の浸食も馬鹿になりません。宮内庁管轄以外では、管理は各行政に任されていますが、予算を付けられず、崩壊するのを見守っているしかないという古墳もあります。

 

 と書いていると、大仙古墳(伝仁徳天皇陵)の墳丘裾部が周濠の水の浸食で崩壊し続けているため、護岸工事を計画しているというニュースが報道されました。

 

 また、堤部の外周にも内周にも埴輪(はにわ)列が確認されたという発表もありました。

 

 この埴輪列については、今城塚古墳の例を見ても明らかで、当時のルールが確認されたということで、あるのが当然でしょう。

 

 世界遺産でもあり、宮内庁の管理でもある大仙古墳のように恵まれた環境にある古墳は、時にそのような修復がなされますが、市町村に管理を任されている古墳は、なかなか予算が回ってこないのは先述の通りです。

 

 要するに古墳が1700年間その姿を維持してこられたのは、周囲の住民の生活に利用され、暮らしに必要とされていたという理由もあるのです。不要だったら失われていたでしょう。

 

 つまり、時代時代の要求で、古墳は失われたり利用されたりしてきたのです。

 

 都を造るから、大寺院を造るから、砦を造るから、住宅街を造るから等々、時代と共に古墳が失われる理由はありますが、保存のために立ち入りを禁止したがゆえに、自然崩壊を続けている貴重な古墳が多く存在するという、本末転倒が起きています。

 

かつての古江古墳/毎日新聞2005年6月16日毎日新聞朝刊一面トップ記事より引用

 残った古墳を保存するという意識を

 

 ちなみに、ついうっかり(?)破壊された古墳もあります。

 

 大阪府池田市の古江古墳は、携帯電話用の通信施設を建設するときに破壊されました。

 

 6世紀に造られた横穴式石室のある、直系13m高さ1.2mの円墳でした。1976年に池田市の調査で発見されたものですが、当時はまだ詳細な調査はなされていませんでした。

 

 大阪府の風致条例や国の文化財保護法に基づく届け出をしないまま工事を始めて、古墳を消滅させてしまったのです(2005616日毎日新聞朝刊一面トップ記事)。

 

 携帯電話の送受信を確実にする必要から、ちょうどその場所が良かったのでしょう。

 

 業者は古墳とは知らなかったということですが、実に重大な瑕疵ですね。許されることではありませんし、取り返しのつかないことになったわけです。

 

古江古墳についての記事/毎日新聞2005年6月16日毎日新聞朝刊一面より引用

 

 今後、1000年先の未来にまで、土を固めて造っただけの古墳を守るにはどうすればよいのでしょう?

 

 この機会にぜひみなさんも考えてみてください。

 

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過去記事

柏木 宏之(かしわぎ ひろゆき)
柏木 宏之かしわぎ ひろゆき

1958年生まれ。関西外国語大学スペイン語学科卒業。1983年から現在も毎日放送アナウンサー、ニュース、演芸、バラエティ、情報、ワイドショー、ラジオパーソナリティ、歴史番組を数多く担当。現在、アナウンサーを続けながら武庫川学院文学部非常勤講師、社会人歴史研究会「まほろば総研」を主宰。奈良大学通信教育部文化財歴史学科卒業学芸員資格取得。専門分野は古代史。奈良大学卒論は「日本列島における時刻の掌握と報知の変遷」

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