不思議な石造物「鬼の雪隠」と「鬼の俎」に秘められた伝説とは?
[入門]古墳と文献史学から読み解く!大王・豪族の古代史 #050
約100年にわたる国家創造の時代に首都であった明日香の旅も、いよいよ南西に広がる檜隈(ひのくま)地域に入る。すると「鬼の雪隠(せっちん)」と「鬼の俎(まないた)」など不思議な石造物に出会うことができる。わが国の始まった場所は、どんなところでなにがあったのだろう?
謎の石造物から壁画古墳まで、古代の流れを体感
私たちは明日香村の南西部に至りました。西に向かってゆっくり歩くと不思議な石造物と伝説に出会います。鬼の雪隠と鬼の俎板です。
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鬼の雪隠 撮影/柏木宏之
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鬼の俎 撮影/柏木宏之
その昔、この辺りを夜更けに旅人が歩いていると、巨大な鬼が現れて旅人を捕まえます。そして大きな石の俎板で料理をして喰らい、そのあと大きな厠で用を足したという不気味な伝説です。
丘の上に「鬼の俎」があって、その丘の下にあるのが「鬼の雪隠」です。実はこれは晩期古墳の石室部材で、俎板が床石で、人為的にか大きな地震によるものかはわかりませんが、くり抜き一体型の石室が丘の下に転げ落ちて仰向けになっているのが鬼の雪隠です。セパレートタイプの構造がよくわかります。
さあ、ここから南に向かうと高松塚古墳に至ります。
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再現高松塚古墳 撮影/柏木宏之
高松塚古墳
1972年に関西大学の故・網干教授の調査で判明した壁画古墳です。今年は発見から50年の記念すべき年なのです。
墳丘は二段円墳で、横穴式石室の6世紀の古墳です。
古墳には石室内にさまざまな絵が描かれた装飾古墳というものがありますが、この高松塚古墳と次に紹介するキトラ古墳は、一線を画していて「壁画古墳」と呼ばれています。描かれた絵の精緻さが装飾古墳をはるかに凌駕しているのです。
近くに壁画館がありますのでここにも寄っておきましょう。そして次はキトラ古墳に行かねばならないでしょう。
キトラ古墳
キトラ古墳も同じころの壁画円墳です。世界最古ともいえる精巧な天文図が描かれていて、先頃日本天文遺産に登録されました。
それにしても「キトラ」とは変わった名前ですね。語源にはさまざまな説がありますが、この地域を「北浦(きたうら)」と呼んだので、それが訛って「キトラ」になったという説があります。ここは新しく整備された歴史公園で、資料館やショップが充実しています。
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キトラ古墳外観 撮影/柏木宏之
そして近鉄飛鳥駅から帰りましょう。これでだいたい丸一日の散策になると思います。
今回案内したコース以外にも、見るべきところはまだまだあります。岡寺や飛鳥坐神社(あすかにいますじんじゃ)に中尾山古墳、橿原神宮や神武天皇陵、整備されて奇麗に輝く牽牛子塚古墳(けんごしづかこふん)、益田の磐船に見瀬丸山古墳、吉備姫神社や大官大寺跡(だいかんだいじあと)などなど・・・。どうぞ実物を見にリアルツアーを楽しんでください!

飛鳥遺跡観光マップGoogleMapより加工作成/柏木宏之