旅で訪れたい横穴式円墳「和久1号古墳」
[入門]古墳と文献史学から読み解く!大王・豪族の古代史 #045
日本全国の広い範囲に古墳は残っており、大半は近畿地方に集中しているが、そのほかの地域にも多数存在している。今回は本州の西の端、日本海に面した山口県下関市豊北町の古墳を紹介する。
「和久(わく)1号古墳」という横穴式円墳の出土品と祭祀とは
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和久1号古墳 撮影柏木宏之
旅先で古墳に出会うと、古墳好きはコーフンしますね。
先日紹介した山口県下関市の弥生時代の貴重な遺跡「土井ヶ浜遺跡」のすぐ北側に、古墳があります。
「和久1号古墳」という6世紀後半の横穴式円墳です。
「北浦街道豊北(ほうほく)」という広大な駐車場とレストラン、新鮮な海産物ショップが大人気の道の駅が目印です。駐車場から少し階段を登ったところにこの古墳があります。
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石室 撮影 柏木宏之
石室(せきしつ)は前室と奥室のある複室墳だったようで、非常に立派な古墳です。
推定される墳丘の大きさは直径10m、高さは2.5m程度、石室は凝灰岩(ぎょうかいがん)と堆積岩(たいせきがん)を使って左右対称に積み上げてありました。副葬品も立派で、ガラス製の玉類、鉄製の刀や鏃(やじり)に馬具、それに数点の須恵器(すえき)が出ています。土器類の出土状況からみて、埋葬時に相当盛大な祭祀が行われたのではないかと考えられています。
封土は失われて石室がむき出しですから、古墳の構造が直接見えてわかりやすいのがいいですね。実はむき出しとはいえ天井石は2個、ちゃんと載っていたのですが、調査をするときに外して、今は落ちていた天井石と共に完成時のようにすぐそばに展示してあります。
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蓋石 撮影 柏木宏之
和久1号古墳は小高い丘の頂上にありますので、そこから見下ろす青く広がる日本海の眺めは抜群です。
ちなみに、堺市の百舌鳥(もず)古墳群も完成したころは海がもっと近くて眺めが良かったでしょう。兵庫県の明石海峡を見下ろす「五色塚古墳」も海の傍です。日本列島に住んだ人たちは、海に何か郷愁のようなものを秘めていたのかもしれませんね。
海に囲まれたような山口県の和久1号古墳も海の向こうが見渡せるような立地です。やはり海の民の首長墓だったのかもしれません。
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角島 撮影 柏木宏之
古墳と道の駅を楽しんだら、是非、すぐそばの角島(つのしま)に足を延ばしましょう。スマホ映えする真っすぐな海道が有名です。角島ではかつてドラマ「HERO」が撮影されて、木村拓哉さんが海に飛び込んだシーンの撮影現場だそうです。
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元乃隅神社赤鳥居 撮影 柏木宏之
そしてこれまたすぐそばに赤鳥居で有名になった「元乃隅(もとのすみ)神社」があります。神社としての歴史は浅いのですが、つとに有名になった観光スポットでもありますね。そして旅に疲れた体は長門温泉や湯田温泉でゆっくり休めてください。季節になれば本場の河豚(ふぐ)料理と山口の銘酒が楽しめます。
瀬戸内側の防府市にはびっくりするほど立派な毛利庭園がありますし、さらに広島よりの岩国市には錦帯橋があります。
もちろん秋芳洞と秋吉台、幕末に高杉晋作が四か国艦隊を砲撃した下関市内は、耳なし芳一伝説の赤間神宮、宮本武蔵と佐々木小次郎が決闘をした巌流島、源氏と平氏が大合戦をした壇ノ浦が目の前です。さらに伊藤博文が清国の使節と講和した春帆楼(しゅんぱんろう)などなど、楽しめるスポットが豊富ですよ。