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『かぐや姫』の舞台は奈良? 日本全土に16万基以上あるといわれる古墳を巡ってみると…

[入門]古墳と文献史学から読み解く!大王・豪族の古代史 #044

 


日本全国の広い範囲に古墳は存在する。大半は近畿地方に集中するが、そのほかの地域にもさまざまな古墳がある。飛鳥時代以前の古代豪族の古墳は、緑地公園として整備されるなど、外観が開放されているものも多い。年末年始の旅がてら、また週末の散歩がてらにでも、足を運んでみるのがおすすめだ。


 

4世紀から5世紀にかけて葛城(かつらぎ)王権にかかわる首長墓群「馬見(うまみ)古墳群」

 

広大な緑地公園となっている馬見古墳外観 撮影柏木宏之

 関西に住んでいると、古墳といっしょに暮しているような場所があります。

 

 堺市や奈良市内の朝などは、古墳の周りを通勤通学の人たちが足早に歩いている日常風景がありますし、古墳が点在している場所を、子供たちが自転車に乗って遊びまわっている風景にも出会います。

 

 夕日が沈む美しい空に古墳がシルエットで見えたりすると、ああ、旅はいいなあ!と感じることがあります。

 

 世界遺産に登録された古墳群はもちろんですが、ほかにもいい場所があります。

 

 奈良県の「馬見古墳群」を歩いてみましょう。奈良県広陵町・河合町域に集中する古墳群で、広大な緑地公園となっています。どういう古代勢力の古墳なのかは明確ではありませんが、飛鳥時代以前、4世紀から5世紀にかけての葛城王権にかかわる首長墓群だろうと思われます。

 

 南北に約7㎞、東西に約3㎞、標高80m程度の馬見丘陵を中心に、大小約250基の古墳が集中しています。古墳は北群・中央群・南群と大きく三群に分かれて、宮内庁が陵墓参考地に指定して管理している古墳もあります。

 

馬見丘陵MAP 提供/柏木宏之

 北群には全長215mの「大塚山古墳」、190mの「鳥の山古墳」などの前方後円墳があり、中央群には4世紀末と推定される204mの特別史跡「巣山古墳」、105mの「ナガレ山古墳」、200mで陵墓参考地の「新木山古墳」、帆立貝式の「乙女山古墳」、やや南西に離れて30面以上の銅鏡が出土した「佐味田宝塚古墳」があります。

 

 南群には137mの「新山古墳」、109mの「狐井城山(きついしろやま)古墳」、そして210mの陵墓参考地「築山古墳」など、大小数えきれないほどの古墳密集地帯です。

 

 古墳群全体は大きな公園でカフェもありますので、半日ゆっくりと散策するのにとても良い場所になっています。

 

『竹取公園マップ』奈良県広陵町HP2面より引用 提供/柏木宏之

かぐや姫の伝説の地は奈良? 1500年前の住居や倉庫が再現

 

 さらに馬見古墳公園の南には「竹取公園」があります。ここはかぐや姫の伝説の地だといわれています。

 

 古墳時代の住居遺構が発掘された場所でもあり、1500年前の住居や倉庫が再現されています。とても広い「みんなの広場」では思いっきりボール遊びもできますし、アスレチック遊びのできる場所もあります。

 

 新型コロナウィルスの流行が終焉を迎えた折には、お出かけになってのびのびと楽しんでみてはいかがでしょうか。古代に触れつつ、自由にゆったり楽しめる場所ですよ。

 

 なお、時間に余裕があるのなら少し足を延ばして、伝説がいっぱいの御所市や明日香村も近いので、古墳時代から飛鳥時代、そして奈良時代をたっぷり楽しめます。

 

 歴史を楽しみながら仲間や家族みんなで休日を満喫できる、歴史好きには楽しい「馬見古墳群」をご紹介いたしました。

 

馬見古墳の説明パネル 撮影柏木宏之

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柏木 宏之(かしわぎ ひろゆき)
柏木 宏之かしわぎ ひろゆき

1958年生まれ。関西外国語大学スペイン語学科卒業。1983年から2023年まで放送アナウンサー、ニュース、演芸、バラエティ、情報、ワイドショー、ラジオパーソナリティ、歴史番組を数多く担当。現在はフリーアナウンサーと同時に武庫川学院文学部非常勤講師を務め、社会人歴史研究会「まほろば総研」を主宰。2010年、奈良大学通信教育部文化財歴史学科卒業学芸員資格取得。専門分野は古代史。歴史物語を執筆中。

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