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大和国の成立と王権や豪族は、どのように発生したのか? 

[入門]古墳と文献史学から読み解く!大王・豪族の古代史 #040

 


古代において豪族は、中央政権だけでなく地方政治も支えていた。今回は、各地に豪族が発生し、その後王権が確立していくプロセスを一から考察してみたい。


 

通信手段や移動手段がない時代をイメージする

藤原宮跡大極殿跡から7世紀と変わらぬ天の香具山を望む 撮影柏木宏之

 古代の日本列島各地に実力集団が発生し成長していくプロセスを改めて考えてみました。

 

 1万6千年ほど前に始まる縄文時代に、血縁関係のある一族が定住生活を始めて小さな集落が各地に生まれます。定住生活をするきっかけは土器の発明が大きな役割を果たしたと考えられています。

 

 やがて近隣の集落とは婚姻などを通じて友好関係を結び、時に協力をして食料生産や備蓄をしていたようで、長い時間をかけて徐々に集落は大きくなります。

 

 弥生時代になると農耕が本格的になり、水争いや農地争いが始まります。集落は大きくなり、環濠(かんごう)や棒杭(ぼうぐい)などで集落を守り、見張り台の櫓(やぐら)も造られるようになります。

 

 弥生時代の大きな集落を「邑国(ゆうこく=村国家)」と呼びます。そうした村がいくつも連合して『魏志倭人伝』に登場する邪馬台国のような有力な邑国連合組織も誕生し、この頃から本格的な国家づくりが始まります。

 

 現代のように便利な通信手段や移動手段がありませんので、生活エリアも限定的でその地域で暮らしが完結する集団がまとまり、全国各地に支配者が乱立するわけです。

 

 豪族の始まりはそんなところからだと考えてよいでしょう。

 

 古来、人の住むところにはその集団を統治する支配システムとルールが自然に出来上がります。やがて小集団は中集団になり、連合や淘汰を繰り返していくつかの大集団が出来上がります。その中でもっとも有力な連合支配者組織が大和王権を築いたと考えればよいのでしょう。

 

栽培も行われていた?! 青森県三内丸山遺跡(縄文時代) 撮影柏木宏之

種をまく時期を告げ稲作に最適な暦法で指示できたから?

 

 当然、大王家も豪族だったはずですが、なぜ最も有力で強大な王権組織となれたのでしょうか?

 

 それは、大陸や半島から最新の文化を取り入れることに成功したからに相違ありません。農耕技術、資源、製鉄、鉄器生産、織物、土器生産、そして財力、武力を手にした王権が権威を以って日本列島を広く治めることになるのです。

 

 大和王権の大王(おおきみ)は絶大な権威を持ち、その権威で君臨しました。その権威の中核は、神の領域であるはずの初期の暦法を知識として独占していたことではなかったか、と私は考えています。

 

 つまり、種をまく時期を告げ、稲作に最適なスケジュールが指示できたのではなかったでしょうか。

 

 第10代崇神天皇の条にある三輪山に大物主大神を祀ったいきさつにはそういうエピソードが隠されているのではないかと私は考えていますし、第34代舒明天皇の残した国見歌などはまさにその情景を私たちに見せてくれているように思われます。

 

『万葉集巻一 二番 舒明天皇』  天皇、香久山に登りて国見したまふ時の御製歌

 

「大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 

海原は かまめ立ち立つ うまし国ぞ 秋津島 大和の国は」

 

 大和の国は美しい山々に囲まれているが、その中でも天の香具山は特別に神聖で美しい。その香具山に登り立って国中を見渡すと、この秋のすばらしい光景が見えるぞ!国中の家々からは炊飯の煙が景気よく上がっている。海原を眺めるとカモメが群がり大漁だ。なんと豊かで良い国か、この秋津島と呼ばれる大和の国は!(柏木流解釈)

 

 これは春の種まき時期に天皇が行う重要な「国見(くにみ)」という神事の時のもので、今年の秋の収穫時がいかに豊作で豊かな光景かを詠ったものです。まさに言霊(ことだま)の国ですね。

 

 つまり、まず食料生産を指導する重要な王権があって、鉄器の生産などの優れた技術や財力・武力に卓越した一族が豪族として王権を支えて国家が成立した、ということになるでしょう。

 

 

 

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柏木 宏之(かしわぎ ひろゆき)
柏木 宏之かしわぎ ひろゆき

1958年生まれ。関西外国語大学スペイン語学科卒業。1983年から現在も毎日放送アナウンサー、ニュース、演芸、バラエティ、情報、ワイドショー、ラジオパーソナリティ、歴史番組を数多く担当。現在、アナウンサーを続けながら武庫川学院文学部非常勤講師、社会人歴史研究会「まほろば総研」を主宰。奈良大学通信教育部文化財歴史学科卒業学芸員資格取得。専門分野は古代史。奈良大学卒論は「日本列島における時刻の掌握と報知の変遷」

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