天武・持統合葬陵や蘇我稲目の墓とされる方墳まで、飛鳥の南を遡る
[入門]古墳と文献史学から読み解く!大王・豪族の古代史 #049
前回は中大兄皇子や藤原鎌足らが蘇我入鹿を暗殺した飛鳥京跡などを訪ね、激動の時代の現場を歩いた。今回は蘇我馬子の墳墓(ふんぼ)といわれる、石舞台古墳へ足を運ぶ。
犬養万葉記念館とお昼ごはん
飛鳥京跡からさらに南に歩くと、万葉学者 故犬養孝(いぬかいたかし)先生を顕彰する「犬養万葉記念館」があり、もう少し歩くと飛鳥鍋で有名な「めんどや」があります。他にも食事処はありますが、お昼ご飯はここで楽しんでもいいですね。
さあ、さらに歩きましょう。次はいよいよ石舞台古墳です。
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石舞台古墳 撮影/柏木宏之
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めんどや 撮影/柏木宏之
石舞台(いしぶたい)古墳
少し上り坂を歩くと右手に石舞台古墳が見えてきます。わが国有数の方墳で、巨大な天井石がむき出しになった蘇我馬子の墳墓です。巨大な石室内に入れますので、羨道から石室内をじっくり観察してください。排水設備や横壁の構造を見て、どうやってこれを造ったのか?を考えてみましょう。
石舞台古墳から、さらに道なりに登りの右カーブを歩きましょう。
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石舞台古墳 羨道 撮影/柏木宏之
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石舞台古墳石棺(復元) 撮影/柏木宏之
都塚(みやこづか)古墳
ここに都塚古墳があります。ここは階段状のピラミッドのような構造だったことが判明している馬子の父親・蘇我稲目(そがのいなめ)の墓だと考えられている方墳です。石室と石棺が間近に観察できますので、是非行ってみましょう。ここから稲渕の棚田を見に行ってもいいし、引き返して橘寺に行くのも良いでしょう。
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都塚古墳石棺 撮影/柏木宏之
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2014年発掘調査中の階段ピラミッド状の遺構が発見された都塚古墳 撮影/柏木宏之
橘(たちばな)寺
橘寺は珍しく東門が正門です。聖徳太子にゆかりのある寺で、法隆寺にある玉虫厨子(たまむしのずし)は元々ここにあったと考えられています。聖徳太子の父親である用明天皇は、即位するまで橘豊日大兄皇子(たちばなのとよひのおおえのみこ)と呼ばれていました。つまりここに宮があったと思われるわけです。二面石など謎の飛鳥石造物も本物がありますので是非観察してください。
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橘寺の二面石 撮影/柏木宏之
橘寺の西門を出て、さらに西に向かって歩きましょう。亀石に出会えます。
亀石
飛鳥には不思議な石造物がいろいろありますが、亀石はその最たる物だといえるでしょう。亀に見えますか? カエルだという人もいますね。いつ誰が何の目的で造ってここに置いたのかは全くわかっていませんが、明日香を代表する石造物なのです。
さて次に向かうのは天武持統合葬陵です。
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亀石 撮影/柏木宏之
天武持統合葬陵
壬申の乱を勝ち抜いて飛鳥に都を戻した天武天皇は神にもたとえられるほどに人気がありました。『万葉集』から「神だ!」と讃えられている天武天皇に捧げられた万葉歌を二首紹介します。
大王は神にしませば天雲の雷の上に庵せるかも 柿本人麻呂
訳:「天武天皇は神様のような方だから、天空の雲に住む雷の神のさらに上空にお住まいなのだ!」
大王は神にしませば赤駒の腹ばう帯を都となしつ 大伴御幸
訳:「天武天皇は神様に違いない!近江に遷都されて馬がゴロゴロ腹這う一面の野原になっていた私たちの飛鳥をまた都に戻された!」
大海人皇子(おおあまのみこ/天武天皇)は中大兄皇子(天智天皇)の弟だとされていますが、実際はどうなのでしょう? 天智天皇の近江宮をわずか40日余りで滅ぼして、明日香に浄御原宮(きよみはらのみや)を開いた大天皇です。皇后は鵜野讃良々皇女(うののさららのひめみこ=持統天皇)です。草壁皇子→文武天皇→聖武天皇→孝謙・称徳天皇と血統が続きます。夫婦で収まった陵墓は巨大な八角墳で、立派な石室と前室があるそうです。
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天武持統合葬陵 撮影/柏木宏之

天武持統合葬陵 復元図展示パネル 撮影/柏木宏之
本居宣長が訪れた時は、すでに盗掘されて石室も開かれ、中で人が焚火をしていたともいわれています。盗掘されたのはご多分に漏れず鎌倉時代で、犯人は逮捕されて取り調べを受けています。明治時代になって発見された『阿不幾乃山陵記(おうぎのさんりょうき)』という古文書にその様子が詳細に残されていました。ですからこの天武持統合葬陵は、珍しく被葬者が判明している天皇陵なのです。
では西に向かって「鬼の雪隠・鬼の俎板」を見に行きましょう。
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飛鳥遺跡観光マップGoogleMapより加工作成/柏木宏之