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乱行の限りを尽くして粛清された無頼漢 “芹沢鴨”

新選組隊士列伝 『誠』に殉じた男たち 第11回


水戸藩浪士で近藤勇とともに初期新選組の局長をつとめた芹沢鴨。近藤・土方との権力闘争の末、自滅ともいえる最期をむかえた無頼漢の足跡に迫る。


 

水戸藩士時代、水戸天狗党に属していたとも伝わる芹澤鴨。剣豪でありながら尊皇攘夷などの理論も兼ね備えていた。近藤・土方でなく、もしも芹澤が隊の主導権をにぎっていれば、新選組はどんな組織になったのか? 興味は尽きない。

 

 芹沢鴨(せりざわかも)は、生年は不明であるが常陸国水戸の生まれである。新選組ではその出身地から名付けられた「水戸派」という派閥の頭領であった。亡くなったのが文久3年(1863)9月16日。生存時の本人の主張などから、没年は32、34、38歳など諸説がある。神道無念流の達人という触れ込みで、しかも派手好きで大声を上げるという、どちらかといえばパフォーマンスで成り立っていた感がある「豪傑」であった。

 

 新選組の前身ともいえる壬生浪士組の結成時には「試衛館派」の近藤勇とともに局長になっている。芹沢の下には、同時に新選組に入隊した平間重助(ひらまじゅうすけ)や新見錦(にいみにしき)などがいたが、彼らはどちらかといえば芹沢という「虎の威を借る狐」であって、威張り散らしても部下などからの信望はなく、いずれは芹沢共々粛清される運命にあった。

 

 芹沢について残された記録や証言などから「芹沢は、身長も高く、でっぷりとした体系だった。色白で、目は小さくて愛嬌があった」という印象であったらしい。尊攘派の過激思想の持ち主でもあって、その言動も大袈裟でしかも八方破れであったから、次第に新選組でも居場所をなくしていった。だが、それでも「尽忠報国之士」という言葉が彫り込まれた鉄の扇を自分のトレードマークにしていた一方で芹沢は、隊士からは恐れられていたことも確かだった。また新選組の「だんだら染め」の隊服のアイディアも芹沢によるものであったという。

 

 文久3年8月12日、芹沢は外国との交易で財を為した京都も糸問屋・大和屋の倉庫倉を焼き討ちした。有名な「大和屋焼き討ち事件」である。大和屋が糸を買い占めて外国との取引をし、大儲けをしたことが芹沢などの気に障ったのであった。

 

 その前のことだが、大相撲の力士との乱闘事件もある。「道を譲れ」「譲らない」で、新選組と力士たちが大乱闘を展開したが、その時に最初に剣を抜いて一刀のもとに斬り下げたのが芹沢であった。この乱闘で、力士側は14人が負傷、3人が重傷、1人が翌日死亡という悲惨な結果になった。

 

 芹沢には愛妾(あいしょう)がいた。お梅という。人妻を無理矢理自分のものにした、ともいわれるが、後にはお梅が芹沢のところに通い詰めたというから、相思相愛であったろう。これは、ある意味で芹沢の優しさという一面が見られる逸話だが、お梅は芹沢とともに殺されることになる。

 

 文久3年9月16日、新選組の大宴会があった。その晩、酔って熟睡した芹沢ら(部下の平山五郎・平間重助)が刺客に襲われる。土砂降りの雨の降る夜半であった。芹沢と同衾(どうきん)していたお梅は、布団の上に倒された屏風から刺し殺された。芹沢は、枕元の刀を抜いて応戦しようとしたが、刺客の1人・沖田総司によって止めを刺された。お梅は即死であった。平山も殺されたが、平間は逃げ延び、そのまま行方を断った。芹沢の死によって、新選組は近藤・土方体制が整うことになる。

 

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江宮 隆之えみや たかゆき

1948年生まれ、山梨県出身。中央大学法学部卒業後、山梨日日新聞入社。編制局長・論説委員長などを経て歴史作家として活躍。1989年『経清記』(新人物往来社)で第13回歴史文学賞、1995年『白磁の人』(河出書房新社)で第8回中村星湖文学賞を受賞。著書には『7人の主君を渡り歩いた男藤堂高虎という生き方』(KADOKAWA)、『昭和まで生きた「最後のお殿様」浅野長勲』(パンダ・パブリッシング)など多数ある。

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