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「仏像」の素材と制作技法の歴史に迫る

今月の歴史人 Part4


仏像とは一体、どのように制作されてきたのか?──。 日本での仏像制作がはじまったのは飛鳥時代。現代にいたるまで技法や素材などは時代とともに移り変わってきたという。今回は仏像制作の歴史と、その詳細を紹介していく。


 

木彫と金銅仏が造られた飛鳥時代と白鳳時代

『誕生釈迦仏立像』鋳造とは、金属原料を熱で溶かし、型に流し入れて冷やし固める法。本像は、小品ながらも躍動感あふれる肉身が巧みに表現される。奈良国立博物館・ColBase

 飛鳥時代は木彫とともに金銅仏が多く造られた。

 

 日本で初めて仏像が造られた飛鳥時代から、時代の変遷とともにさまざまな素材の仏像が造られた。

 

 仏像が大陸から伝えられた飛鳥時代には、金銅仏と木彫像が多く制作され金銅仏は材質が堅固で壊れにくく、表面に施された鍍金も失われにくいために、今日まで造立当初の姿を残すものが多い。飛鳥時代の木彫像は、平安時代以後の木彫像に使われたヒノキ材ではなく、クス材で造られていることが特色である。

 

 7世紀の飛鳥時代の仏像を代表する法隆寺金堂の銅造釈迦三尊像、法隆寺夢殿の木造救世観音像、同寺百観音堂の木造百済観音像などは、 身体のバランスがやや自然さを欠き、 衣の表現も硬いが、そこには、人間を超越した存在である仏の姿が印象深くあらわされている。

 

 飛鳥時代の後期にあたる7世紀後半の時代を白鳳時代と呼ぶことがある。この頃になるとみずみずしい肉体をもつ明るい表情の仏像が造られるようになる。

 

 薬師寺の銅造薬師三尊像は制作が 白鳳時代か次の奈良時代か諸説があるが、そこには美しいプロポーションを持った写実的な表現が見られる、この頃の代表作である。

 

奈良時代に入ると塑造や乾漆造が盛んに

『 侍 者 坐 像( 法 隆 寺 塔 本 塑 像 )』 奈良時代の塑像ならではの柔軟で自然な肉付けから、写実的な 作風がうかがえる。表面に施された彩色はほとんど剥落し今は 明るい黄土色の仕上げ土が露出している。奈良国立博物館・ColBase

 飛鳥時代後期(白鳳時代)から8世紀の奈良時代にかけては、それまでの金銅仏に加えて、塑像(そぞう)の制作も始まった。

 

 塑像は材料の入手が比較的たやすく、手軽に造れるメリットがある一方で、重くてもろいという難点がある。多くの塑像が造られたが、完全な姿で現在まで残るものは多くない。 東大寺戒壇堂四天王像、同寺法華堂日光月光菩薩像、新薬師寺十二神将像などが奈良時代の代表的な塑像の遺品であ る。

 

 奈良時代には、粘土を用いる塑像とともに、漆を用いる乾漆像の制作が流行した。乾漆像のうち、 仏像の体内が空洞となる張り子状の脱活 乾漆像の遺品としては、光明皇后が母・橘三千代の一周忌に完成させた興福寺西金堂に置かれた十大弟子八部衆像がよく知られている。同様に、天平彫刻の典型と言われる東大寺法華堂の本尊不空羂索観音像も、脱活乾漆造の代表的な仏像だ。

 

 このように、奈良時代初期から中期にかけて脱活乾漆像は盛んに造られたが、手間と時間がかかり、材料となる漆が高価という難点があった。そのため、奈良時代後期には木彫の表面に漆を盛り上げる木心乾漆像が多く造られるようになった。この技法で造られた仏像としては、奈良県聖林寺の十一面観音立像が有名である。すらりとしたのびやかな姿形が特徴的だ。

 

 奈良時代後期に中国から戒律を伝えるために鑑真が来朝すると、仏像にも新たな時代が訪れるようになる。

 

 唐招提寺金堂には脱乾漆造盧舎那仏坐像が安置され、鑑真の肖像も脱乾漆像であるが、同じ寺内の講堂に伝わった木彫仏群の迫力のある造りには、次代の仏像様式への発展を予感させるものがある。

 

 9世紀平安時代には金銅仏や塑像、 乾漆像の造立は減少する。

 

 代わってカヤなどの針葉樹材を用いた木彫像が、仏像制作の中心となる。この時代の木彫像は多くの場合、 像の中心部を一つの木材から彫るものが多い。この技法は、平安時代後期から流行した、複数の材木を組み合わせた寄木造に対して、一木造と呼ばれる。

 

 一木造の仏像の代表作である京都府神護寺の薬師如来立像には、迫力のある表現によって、木が本来持つ重量感が感じられる。この時代にはこのように内面から力が溢れ出るような仏像が盛んに造られた。

監修/副島弘道、文/宇治有美子

『歴史人』11月号「日本の仏像基本のき」より

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