太平洋戦争勃発の遠因となる連続した”国内恐慌” ─世界恐慌の余波と日本─
今月の歴史人 Part.1
日米開戦80年目を迎えた2021年。日本史上でももっとも大きな戦争として歴史に残る太平洋戦争の遠因に、日本国内の経済状況があったという。大正時代から昭和初期までに立て続けに発生していた国内恐慌をここでは紹介。経済の不安定さは国内の状況を混乱へと陥れていたようだ。(『歴史人』2021年8月号 「太平洋戦争勃発の真相」より)
第1次大戦、関東大震災、世界恐慌など…立て続けに日本経済へダメージが

左から松方正義、高橋是清、濱口雄幸/国立国会図書館蔵
【大正時代から昭和初期の経済状況】
1914年にはじまった第1次世界大戦により各国政府とも金本位制を中断し、管理通貨制度に移行した。戦争での対外支払のために金貨の政府への集中が必要となり、金の輸出を禁止、通貨の金兌換を停止せざるをえなくなったからだった。大戦終結にともない1919年に米国が、1925年には英国が金本位制に復帰していた。
<大戦景気>
第2次大隈重信内閣~寺内正敬内閣の頃
第1次世界大戦でヨーロッパ諸国の生産が停滞し、日本の製品の輸出が増加 →成金が生まれる。
<戰後恐慌>
原敬内閣~加藤友三郎内閣の頃
第1次世界大戦が終結し、ヨーロッパの生産が回復、日本の企業は在庫を抱えることになり不景気に。
<震災恐慌>
第2次山本権兵衛内閣~加藤高明内閣の頃
関東大震災によりダメージをうけた企業の経営が悪化。
<金融恐慌>
第1次若槻礼次郎内閣~田中義一内閣の頃
「震災手形」の処理が進まず、銀行の経営悪化による金融危機がおこる。
<昭和恐慌>
浜口雄幸内閣~第2次若槻礼次郎内閣の頃
為替相場の安定を図るため「金解禁」を行ったが、逆に輸出不振に陥り、世界恐慌の影響を受けて大不況に陥る。
【関連主要人物たち】
大蔵大臣・高橋是清

国立国会図書館蔵
震災の処理のための震災手形が膨大な不良債権と化し金融不安の中、取り付け騒ぎへ。大蔵大臣として支払猶予措置(モラトリアム)を行い、片面だけ印刷した急造の200円札を発行し預金者を安心させて金融恐慌を沈静化させた。
昭和4年(1929)狙撃された首相・濱口雄幸(はまぐちおさち)

国立国会図書館蔵
紙幣の大量発行により海外から水増しとして日本円の価値が下がり貿易不振に。そのため緊縮財政と金解禁を実施。ロンドン海軍軍縮会議で条約調印。1930年、東京駅で右翼青年に狙撃され、翌年死亡。
元老・松方正義(まつかたまさよし)

国立国会図書館蔵
明治期、財政家として兌換紙幣である日本銀行券の発行による紙幣整理や金本位制を確立。官営模範工場の払い下げや、煙草・酒造・醤油などの増税など財政収支を改善させインフレーションも押さええ込んだ。
監修・平塚柾緒