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歩兵の支援なしでの塹壕(ざんごう)線突破を目指した「陸の怪物」:シャール2C(フランス)

究極の「陸上軍艦」多砲塔戦車 第2回 ~ 戦場を闊歩する夢想の無敵巨大戦車 ~

360度全周の敵兵に対応した進化型戦車

 

第二次大戦に参加したシャール2C。巨大な車体で中央の主砲塔に75mm砲、車体後部の銃塔には8mm機関銃を装備していた。乗員数は実に12名。第二次大戦中の一般的な戦車の乗員数は4~5名なので、実に約3倍もの人手が本車の運用には必要であった。

 第一次大戦での戦車運用の戦訓のひとつに、前進を続ける戦車の後について進まねばならないはずの歩兵が、敵の防御火力に晒されて遅れてしまい、戦車だけが突出して進んだ結果、敵の歩兵に包囲肉薄攻撃を加えられて撃退されるという事例があった。このような事態を避けるため、味方の歩兵は何としても戦車についていなければならないはずなのだが、指導的立場にある歩兵科の士官たちは保守的で、戦車を守ることがひいては味方歩兵の損害をも減らす、という認識などは持ってはいなかった。

 

 そうであるなら、戦車は自分で自分の身を守ればよい。最初にこう発想したのは、フランス陸軍であったとされる。戦車発祥の祖であるイギリス陸軍は、車体の両側面にスポンソンを配し、そこに砲や機関銃を搭載した菱形戦車を運用していたが、このような武装の配置なら、搭載火器で車体の正面ばかりでなく側方も射界に収められるため、近づいて来る敵の歩兵から自車を守ることも不可能ではなかった。

 

 だが、フランス陸軍が開発したシュナイダーCA1やサン・シャモン突撃戦車は、搭載した大口径砲の威力により正面火力は菱形戦車に勝っていたが、側面火力が脆弱であった。これに対して、フランス陸軍が両車の直後に開発し、のちに「近代戦車の始祖」と称されることになるルノーFT17は、車体の前部に操縦室、中央部に全周旋回砲塔を備えた戦闘室、後部に機関室が配されており、単一の全周旋回砲塔に搭載された主武装で、360度全周を射撃できる設計であった。これなら、四方から戦車に向かってくる敵の歩兵を撃つことができる。

 

 ところが、当時のフランス陸軍では、それまでのように歩兵部隊を先導して敵の塹壕(ざんごう)線を突破する戦車も必要と考えられていた。そこで、味方の歩兵や僚車の援護がなくても単独で敵の塹壕線を突破することができ、集まってくる多数の敵歩兵を、自らが搭載する火力で撃退できる能力を備えた戦車が考えられた。

 

 それが、第一次大戦の終戦直前に造られた試作戦車のシャール1Aである。そして、同車に当時最新の技術と試験で得られた改善個所を盛り込み、大幅な発展改良型として誕生したのがシャール2Cだった。

 

 シャール2Cは、車体中央やや前部に主砲塔を備えるだけでなく、車体側面や背後からの敵歩兵の攻撃に対処できるように、車体後部に機関銃を搭載した旋回銃塔を備えた大型の多砲塔戦車だった。だが、予算も含めてフランス陸軍内部における諸問題が原因で、第一次大戦には間に合わなかった。そして戦後に10両が生産され、一部の車両は第二次大戦に投入されたものの、すでに旧式化しておりまともな戦力としては通用しなかった。

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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