×
日本史
世界史
連載
ニュース
エンタメ
誌面連動企画

映画『るろうに剣心』最終章は人斬りだった男が新時代・明治で挑む究極の戦い

歴史を楽しむ「映画の時間」第12回 

人斬り抜刀斎として恐れられた男・剣心の十字傷の謎  

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

 

    佐藤健(さとう・たける)主演、大友啓史(おおとも・けいし)監督による『るろうに剣心』シリーズの終幕を飾る、『るろうに剣心 最終章』が2部作で登場。

 

 423日から公開される「The Final」では、主人公・緋村剣心(ひむら・けんしん)に恨みを持つ最強の敵・雪代縁(ゆきしろ・えにし)が、剣心の仲間たちを次々に襲撃。自分のせいで周りの人間に害が及ぶことになった剣心は、縁と彼を取り巻く一派を向こうに回し、最後の戦いを挑んでいく。

 

剣心を絶体絶命のピンチに追い込む圧倒的な強さの男・縁

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

 今回は剣心の左頬にある十字傷の謎を知る男・縁が、過去からの因縁により剣心を絶体絶命のピンチに追い込んでいく様が描かれる。この縁を演じているのが、新田真剣佑(あらた・まっけんゆう)。

 

 列車の中で斎藤一(さいとう・はじめ)たち警官に取り囲まれ、たった一人で彼らを圧倒的な強さで倒していく冒頭のアクションから、最強キャラとしての凄みが全開。

 

 このシリーズでは第1作の吉川晃司(きっかわ・こうじ)、第23作での藤原竜也(ふじわら・たつや)と、敵キャラを演じた俳優は素晴らしい身体能力を披露して、原作コミックさながらの超絶アクションを見せてくれたが、新田真剣佑もそれに引けを取らないスピーディーかつ力強い動きが印象的だ。

 

 縁は〈上海マフィア〉のボスとして日本へ乗り込み、東京を大混乱に陥れる。歴史的に見れば時代設定の明治12(1879)に、まだイタリア内部の組織だった〈マフィア〉という言葉が、日本や上海で一般的に使われていたわけはない。ここでは上海の闇組織を表す呼称ということだろう。

 

 また縁は犯罪に熱気球を使用するが、これも日本で有人の熱気球を飛ばすようになったのは20世紀に入ってからで、いろんな部分にコミックとしての飛躍があるが、そこはエンターテインメントとして純粋に楽しめばいいのである。

 

これまで映画を彩ってきたキャラクターが総結集

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

 『The Final』にふさわしく、これまで映画シリーズを彩ってきたキャラクターたちが総結集。

 

 剣心の仲間である神谷薫(かみや・かおる=武井咲/たけい・さき)、相楽左之助(さがら・さのすけ=青木崇高/あおき・むねたか)、高荷恵(たかに・めぐみ=蒼井優/あおい・ゆう)といったレギュラー・メンバーは勿論、味方として斎藤一(江口洋介/えぐち・ようすけ)、元御庭番衆の四乃森蒼紫(しのもり・(伊勢谷友介)、彼を慕う巻町操(土屋太鳳)も登場。

 

 彼らが剣心を縁と一騎打ちさせるべく、縁一派の強敵を各々自分で相手にして、剣心を先に送り出していく最終決戦は、サブ・キャラクターたちの見せ場になっていて、シリーズのファンには心躍る展開だ。

 

圧巻は剣技に中国武術も入り混じっての肉弾戦アクション

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

 それより先の剣心と縁との戦いがどうなるかは映画を観て確認して欲しいが、佐藤健と新田真剣佑、二人の緊張感溢れるぶつかり合いから目が離せない一大バトルになっている。

 

 このシリーズでは香港映画界で活躍してきた谷垣健治がアクション監督を務め、常識を破る刀での手数の多さを、驚くべきスピード感で見せる殺陣が目を引いてきたが、今回は縁が上海帰りということもあって、剣技に加えて中国武術も取り入れたまさに肉弾戦のアクションに仕上げているのが特徴的だ。

 

 最近は大正時代を背景にした『鬼滅の刃』が話題になったが、この作品の時代は明治。

 

 その12年と言えば廃刀令から3年後で、すでに刀を差す武士の世界は遠くなっていたわけで、街中でこんな殺し合いがあったわけではないだろう。だが一方でこの年には日本でコレラが流行し、多くの死者が出ている。

 

 世相としては決して明るい時代ではなかったわけで、しかもこの15年後に起こる日清戦争に向けて、すでに日本と清国との関係は悪化しつつあった。そういう時代背景を背負って日本へやってくる縁たち〈上海マフィア〉の存在は、娯楽作とはいえ、当時の日中関係を思わせる部分もあって興味深い。

 

 この作品に続いて6月に公開されるシリーズ最終作『The Beginning』では、元治元年(1864)を背景に、剣心に十字傷が刻まれるまでのエピソードが綴られる。そこには桂小五郎や高杉晋作も登場するので、歴史ファンはどんな桂や高杉像が描かれるのかにも、注目していただきたい。

 

4月23日より公開

『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』

 

監督/大友啓史

出演/

佐藤 健
武井 咲 新田真剣佑
青木崇高 蒼井 優 伊勢谷友介
土屋太鳳 / 三浦涼介 音尾琢真 鶴見辰吾 中原丈雄 /北村一輝
有村架純 江口洋介

製作年/2020年 製作国/日本

 

公式サイト

https://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin2020/

 

KEYWORDS:

過去記事

金澤 誠かなざわ まこと

1961年生まれ。映画ライター。『キネマ旬報』などに執筆。これまで取材した映画人は、黒澤明や高倉健など8000人を超える。主な著書に『誰かが行かねば、道はできない』(木村大作と共著)、『映画道楽』、『新・映画道楽~ちょい町エレジー』(鈴木敏夫と共著)などがある。現在『キネマ旬報』誌上で、録音技師・紅谷愃一の映画人生をたどる『神の耳を持つ男』を連載中。

最新号案内

歴史人2023年4月号

古代の都と遷都の謎

「古代日本の都と遷都の謎」今号では古代日本の都が何度も遷都した理由について特集。今回は飛鳥時代から平安時代まで。飛鳥板蓋宮・近江大津宮・難波宮・藤原京・平城京・長岡京・平安京そして幻の都・福原京まで、謎多き古代の都の秘密に迫る。遷都の真意と政治的思惑、それによってどんな世がもたらされたのか? 「遷都」という視点から、古代日本史を解き明かしていく。