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三國志の英雄・劉備は、本当は優柔不断で調子がいい男だった!?

歴史を楽しむ「映画の時間」第1回

「今日から俺は!!劇場版」の福田雄一監督の新作「新解釈・三国志」

 

Ⓒ2020映画『新解釈・三國志』製作委員会

 実写映画『銀魂』2部作や「今日から俺は‼劇場版」の成功によって、今やコメディ作品のヒットメーカーになった福田雄一監督。その彼が新たに手掛けたのが『三國志』の世界を、独自の視点から描いた「新解釈・三國志」である。

 

 英雄たちが群雄割拠した後漢末期の中国を舞台に、やがて蜀を治める劉備(りゅうび)役の大泉洋を中心に、魏の曹操(そうそう)に小栗旬、呉の孫権(そんけん)に岡田健史を配して、劉備と関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)が義兄弟の契りを結ぶ【桃園の誓い】から劉備と孫権(そんけん)の連合軍が圧倒的な勢力を誇る曹操軍と対決する【赤壁の戦い】までを、賀来賢人、橋本環奈、山田孝之、佐藤二朗、ムロツヨシなど、これまで福田監督の作品を彩ってきたオールスターキャストで描いていく。

 

 とはいっても福田監督の手にかかれば、『三國志』の英雄たちも普通のキャラクターにはなっていない。劉備はとにかく戦いの先頭に立つのが嫌で、責任を取るのもできれば避けたい。ただ酒を飲むということがでかくなって、なぜか周りがその言葉に乗せられていく優柔不断で調子のいい男として登場する。

 

 ムロツヨシ演じる天才軍師・孔明(こうめイ)も、大胆な戦略を立ててみんなを驚かせるが、言った後からすぐに後悔する。歴史は起こった出来事が羅列されていくが、その出来事が起こるまでのプロセスを、福田監督はここで英雄たちの人物像も含めて自由な発想で解釈しているのだ。

 

渡辺直美が演じる中国4大美女の一人・貂蝉

Ⓒ2020映画『新解釈・三國志』製作委員会

 中でも飛び道具的なキャスティングなのが、宮廷の実権を握る董卓(とうたく)とその片腕である武将・呂布(りょふ)との仲を裂くために宮中へ送られる貂蝉(ちょうせん)役の渡辺直美。伝えられる貂蝉は当時16歳くらいで、中国4大美女の一人に数えられるが、ビヨンセばりの踊りで董卓と呂布を篭絡する渡辺の貂蝉には、美しさとはまた違ったインパクトと迫力がある。

 

 これに対して孫権に仕える武将・周瑜(しゅうゆ)役の賀来賢人、彼と相思相愛の妻・小喬(しょうきょう)に扮した山本美月は、見た目的にはイメージ通りのカップルで、意外性と納得のバランスが取れたキャスティングも見どころである。

 

 クライマックスに【赤壁の戦い】を持ってくる映画では、ジョン・ウー監督の大作「レッド・クリフ」2部作があったが、あの壮大なスペクタクルを期待してはいけない。勿論ワイヤーアクションやCGを駆使した戦闘シーンが数多く登場するし、呂布役の城田優は馬上で長柄刀を見事に振り回して、剛勇無双の武将になり切っているが、ここでのアクションはあくまで見た目を盛り上げるための、いわば調味料といったところ。ポイントは英雄と呼ばれた人々の人間性を身近な一般人と同列に捉えることで、歴史を勝手に楽しんでしまおうという監督の姿勢にある。

 

福田監督が繰り広げる歴史妄想を楽しもう

 

Ⓒ2020映画『新解釈・三國志』製作委員会

   福田監督はかつて、TVで「新解釈・日本史」をムロツヨシ主演で作ったが、あのドラマでも『信長は潔く自害したのか』とか、『薩長同盟は本当に坂本龍馬の手柄なのか』といったことを毎回テーマに、彼ならではの笑える歴史解釈を展開した。今回の映画はスケールを大きくしたその中国版といった感じがある。  

 

 歴史を題材にしたコメディには、紀元前からフランス革命までの歴史を笑いに変えて描いた「メル・ブルックス 珍説世界史PART1」など海外作品にも例があるが、今回の映画が成功すれば福田監督の新解釈歴史シリーズはこれからも続いていくかもしれない。

 

 歴史ファンには事の真実を探求していく人と、ある出来事を自分なりに解釈して妄想を楽しむ人がいると思うが、後者の代表する福田監督の三國志に対する妄想を、肩の力を抜いて楽しんでいただきたい。

 

【映画情報】

1211日(金)より全国東宝系ロードショー

「新解釈・三國志」

監督・脚本/福田雄一 出演/大泉洋、ムロツヨシ、小栗旬ほか 

製作年/2020年 製作国/日本

公式サイト https://shinkaishaku-sangokushi.com/

 

 

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金澤 誠かなざわ まこと

1961年生まれ。映画ライター。『キネマ旬報』などに執筆。これまで取材した映画人は、黒澤明や高倉健など8000人を超える。主な著書に『誰かが行かねば、道はできない』(木村大作と共著)、『映画道楽』、『新・映画道楽~ちょい町エレジー』(鈴木敏夫と共著)などがある。現在『キネマ旬報』誌上で、録音技師・紅谷愃一の映画人生をたどる『神の耳を持つ男』を連載中。

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