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桶狭間の戦い直前に高校生たちが校舎ごとタイムスリップ! 〜話題の映画『ブレイブ -群青戦記-』〜

歴史を楽しむ「映画の時間」第10回 

大人気コミックを本広克行監督が映画化! 話題の最新作『ブレイブ -群青戦記-』

©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会©笠原真樹/集英社

 『ブレイブ -群青戦記-』は笠原真樹(かさはら・まさき)原作のコミックを、本広克行(もとひろ・かつゆき)監督が新田真剣佑(あらた・まっけんゆう)主演で映画化した青春アクション群像劇だ。

 

 全日本レベルのアスリートを次々に排出しているスポーツ強豪校の生徒たちが、ある日突然、校舎ごと戦国時代にタイムスリップ。時は桶狭間(おけはざま)の戦い(1560519)直前で、生徒たちは現代に戻る方法を探しながら、襲い掛かる戦国の武士たちとの戦いに身を投じていく。

 

 現代人が戦国時代にタイムスリップする映画と言えば、『戦国自衛隊』(1979)が有名。

 あの映画では戦車や軍用ヘリを擁する日本の自衛隊が上杉謙信(うえすぎ・けんしん)に加勢し、武田信玄(たけだ・しんげん)に川中島(かわなかじま)で戦いを挑んだ。

 

得意のスポーツを活かして高校生はいかに武士に立ち向かうのか!?

©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社

 自衛隊の場合は現代の最新武器を持っているので戦力になるが、高校生たちはどうやって武士に立ち向かうのか。野球部やアメフト部はボールを使った投擲(とうてき)系、空手部や柔道部は密着型の戦闘系、主人公は弓道部に入っていて、そのまま矢を武器として使える。これに科学部が火薬などを生成してサポートして、一応の戦闘態勢が整う。

 

命のやり取りの場に立たされたら…高校生たちの葛藤や恐怖、そして仲間を失う哀しみ

©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社

 だがこの映画は、単なるスポーツ高校生と武士との異種格闘技戦を描いたエンターテインメントではない。人を殺した経験のない高校生たちの、心のモチベーションにスポットを当て、命のやり取りの場に立たされた彼らの葛藤や恐怖、仲間を失う哀しみなどを描いた、人間ドラマにもなっているのだ。

 

 そのなかで主人公・西野蒼(にしの・あおい)を演じた新田真剣佑は、最初は目立つことが苦手でスポーツ集団の後方に控えているが、徐々に中心的な存在になっていく変化を繊細に表現している。

 

 

織田信長VS高校生 〜丸根砦で繰り広げられる人質奪還作戦〜

©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社

 歴史ファンから見れば、桶狭間の戦いが題材になっているところに目が行くだろう。この戦いは押し寄せる今川義元(いまがわ・よしもと)の大群に、まだ尾張の小大名だった織田信長(おだ・のぶなが)が奇襲を仕掛け、見事に義元の首を討ち獲って、戦国の覇者に駆け上がっていくきっかけを作った、歴史的な一戦。

 

 多くの歴史ものでは、圧倒的な劣勢を跳ね返した信長を主人公にしているが、ここでの信長は完全に悪役。織田軍はまず、蒼たちがいる校舎に攻め込んで殺戮を繰り広げ、数人を人質にとる。西野たちは人質を奪還するために、織田軍が対今川軍のために築いた丸根砦(まるねとりで)へと向かうのである。

 

 丸根砦の攻防は、桶狭間の戦いの前哨戦として歴史的にも知られている。史実では織田軍の武将・佐久間盛重(さくま・もりしげ)が守る丸根砦を、当時今川の人質になっていて、この戦に参陣した松平元康(まつだいら・もとやす)、つまり後の徳川家康(とくがわ・いえやす)率いる今川軍が全滅させた戦いである。

 

三浦春馬演じる松平元康は高校生たちを後方支援という形でサポート

©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社

 映画では砦に攻め込むのは今川軍ではなく、仲間を救うために名乗りを上げたアスリート高校生たち。これを松平元康は後方支援という形でサポートする。この元康を演じているのが、三浦春馬(みうら・はるま)。仲間を救いたいと思いながらも危険な場所へ赴くことに躊躇する蒼に、自分の信念によって前に進むことの大切さを説く元康の、凛とした爽やかな存在感が印象的。

 

 三浦春馬は、『おんな城主 直虎(なおとら)』を始め大河ドラマ数本と最後の主演映画『天外者(てんがらもん)』など、時代劇には数えるほどしか出演していなかったが、ここでは堂々とした武将ぶりを見せていて、改めて素晴らしい役者であることを知らしめている。

 

戦国を生き抜く高校生たちの熱き戦いのキーパーソンは佐久間盛重

©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社

 他にも織田信長を憎々しげに演じる松山ケンイチが、意外にもはまり役。

 

 彼ら有名な武将よりも、この映画では丸根砦を守る佐久間盛重がすべてのキーパーソンになっているのだが、それがどういうキャラクターなのかは映画を観て確かめてほしい。設定は奇想天外だが、中身は決してぬるくない、戦国を生き抜く高校生たちの熱い戦いを映し出した、異色の作品になっている。

 

 

【映画情報】

 大ヒット上映中!

『ブレイブ群青戦記

 

監督/本広克行 

原作/笠原真樹「群青戦記 グンジョーセンキ」(集英社ヤングジャンプ コミックス刊)

出演/

新田真剣佑

山崎紘菜、鈴木伸之、渡邊圭祐、濱田龍臣、鈴木仁、飯島寛騎、福山翔大、

水谷果穂、宮下かな子、市川知宏、高橋光臣

三浦春馬、松山ケンイチ

 

時間/116分、製作年/2021年 製作国/日本

公式サイト

https://brave-gunjosenki.jp

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過去記事

金澤 誠かなざわ まこと

1961年生まれ。映画ライター。『キネマ旬報』などに執筆。これまで取材した映画人は、黒澤明や高倉健など8000人を超える。主な著書に『誰かが行かねば、道はできない』(木村大作と共著)、『映画道楽』、『新・映画道楽~ちょい町エレジー』(鈴木敏夫と共著)などがある。現在『キネマ旬報』誌上で、録音技師・紅谷愃一の映画人生をたどる『神の耳を持つ男』を連載中。

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