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ドローンの進歩で推進される「戦場の無人化」「戦闘の遠隔操作化」

ドローンが変える現代の戦争 第4回 ~アメリカ軍からテロ組織まで、 すべての軍隊が装備する驚異の飛行兵器!~

今や「ドローン」対「有人戦闘機」ではドローンが有利に

 

精密誘導爆弾(スマート爆弾)のペイブウェイを翼下に懸吊したMQ-9リーパー。ちなみに「リーパー」とは、伝説に登場する穀物刈り取り用の大鎌を振りかざした死神のことである。

「戦時下における1年の技術進歩は、平時のそれの10年分に匹敵する」というたとえのごとく、第二次世界大戦は、遠隔操縦技術を格段に向上させた。

 

 そのため、戦後はまず無人標的機や無人偵察機、無人対潜ヘリコプターなどが実用化されることになった。とはいえ、遠隔操縦においてもっとも難しいのは、天候や風向などによって微妙な調整が必要な離着陸の操作である。ゆえに、これら1960年代から1970年代末ぐらいまでに登場した極初期のドローンの中には、カタパルトで射出(離陸)され、飛行は遠隔操縦できるが、回収(着陸)はパラシュートというものも存在した。

 

 当時のドローンの最大の問題点は、遠隔操縦に不可欠な飛行中画像や操縦電波の送受信であった。そのためドローンが目視できる位置で遠隔操縦をしなければならず、ドローンからのリアルタイムの飛行中映像も得られないので、単純な飛行コースを飛ぶことしかできなかった。

 

 とはいえ、標的以外では敵地領空に侵入して写真撮影を行う危険な偵察任務は、無人のドローンにとって最適と判断され、実戦用ドローンとしてもっとも早く実用化されたのが偵察型であった。

 

 ドローンの開発に特に熱心だったのは、イスラエルとアメリカである。その理由は、撃墜されることによる戦死者や捕虜をできるだけ生じさせないようにするためと、ドローン技術は航空宇宙技術を推進するうえでの副次的産物ともいえたからだ。

 

 2000年代に入ると、技術進歩により衛星を利用した飛行中映像の取得や遠隔操縦が可能となり、たとえるなら「地球の裏側から」ドローンを操縦できるまでになった。

 

 その結果、偵察のような非戦闘任務だけでなく、対地攻撃に代表される戦闘任務にもドローンが投入されるようになる。例えばアメリカのRQ-1プレデターは、コソボ紛争で偵察任務に投入されて数機が撃墜されている。また、イラク戦争では世界初の有人戦闘機との空戦の末に撃墜されたが、このときのイラク軍戦闘機はMiG-25だったとも伝えられている。

 

 プレデターの武装型MQ-1は、対戦車ミサイルから発展したヘルファイア誘導ミサイルによる対地攻撃が可能で、同機の後継となるMQ-9リーパーと共にタリバンやアルカイダの要人暗殺で戦果を得ている。だがピンポイント攻撃をしているとはいっても周囲の無関係の人間にも被害を及ぼしているため、より誘導精度が高く破壊力が限定的なミサイルの搭載が進められている。

 

 今日では、中継による遠隔操縦が可能となったので、例えば中東で作戦中のドローンをアメリカ本土で操縦することも可能となっており、実際にそのような運用がなされている。おかげで、ドローン操縦者は「出撃」が終わったら、家族の待つ自宅に帰ってのんびり過ごすことができる。加えて、撃墜され戦死したり敵の捕虜になることもない。

 

 かような事情により、アメリカのドローン操縦者の数名に1人は民間人だが、人員の殺傷をともなう任務は、軍規によって軍人の操縦者が遂行するという。

 

 なお、ドローン本体もドローン・コントロール・ユニットも容易に輸送機に搭載可能なので、世界中のどこへでも運ぶことができる。

 

 ちなみに、アメリカだけでなくロシアやイギリス、フランスなどでも、ドローンの運用はほぼ同様といえる。

 

 空戦機動は、遠隔操縦のドローンにとって最後の難関だったが、現在、すでにドローン対有人戦闘機の空戦試験が終了しており、現実にドローンが有利という結論が出て、アメリカではドローンによる空戦も可能となっていると伝えられる。

 

 一方、中継用の衛星を持たないテロ組織も、ドローンを遠距離攻撃兵器として運用している。もっとも、大国が高価で高性能な軍用ドローンを運用しているのに対し、テロ組織は民生品、つまり農薬散布や写真撮影、配達などに用いる目的で開発されたドローンを改造して爆薬や毒ガスの運搬を可能とし、テロ攻撃に用いるのが専らだ。

 

 実際にドローンに搭載した爆薬を用いたテロも行われているが、民生用ドローンは軍用ドローンに比べて搭載量が少ないので、爆薬による攻撃は被害範囲が限定的なのが救いといえる。

 

 それよりも危険なのは、農薬に代えて、細菌兵器や毒ガス兵器を散布する無差別テロに用いられることだ。幸いにも、現時点ではテロ組織はそういった兵器の入手が困難だが、いつ現実となるやもしれない恐怖は常にある。

 

 ドローン技術の進歩は、今後ますます「戦場の無人化」「戦闘の遠隔操作化」を推進すること間違いない。

 

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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