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第1次世界大戦直後に開発されたドローン

ドローンが変える現代の戦争 第1回 ~アメリカ軍からテロ組織まで、 すべての軍隊が装備する驚異の飛行兵器!~

制御情報を事前に入力し無人で目標に命中させる空中魚雷が軍用ドローンの始まり

発進準備中のケタリング・エアリアル・トーピード試作機。ご覧のように外観は小型の複葉機そのものである。離陸滑走に際しては小型台車が用いられ、機体のみが浮揚して飛行した。

 今日、ドローンという言葉がやたらにもてはやされている。「無人でコントロール可能な空を飛ぶもの」がそう呼ばれるが、それはそれで間違いではない。

 

 だが、ドローンは突然生まれたものではなく、その後ろには長い歴史がある。

 

 そもそもドローン(Drone)とは、蜂や蠅などの羽音のことだ。まあ確かにプロペラを用いて飛行する飛翔体は「羽音」を出すのでこう呼ばれるのはわかるが、実はドローンの言葉が充てられるようになるには、ちょっとした歴史があった。

 

 だが、まずその前に、「無人でコントロール可能な空を飛ぶもの」の歴史の始まりを押さえておこう。

 

 アメリカが第1次大戦に参戦した後、陸軍航空局は、発明家でデイトン・エンジニアリング・ラボラトリーズ・カンパニー創業者のチャールズ・フランクリン・ケタリングに対し、とある無人兵器の開発を依頼した。それは、発射(離陸)位置から75マイル圏内の目標を攻撃可能な、自立飛行をする空中魚雷(エアリアル・トーピード)である。

 

 これを受けたケタリングは、ライト兄弟の弟のオーヴィルや、ジャイロ・スタビライザーの研究で高名なエルマー・アンブローズ・スペリーらの協力を受け、自社において設計と開発を行い、ケタリング・エアリアル・トーピード(Kettering Aerial Torpedo)を実用化した。だがこの名称では長ったらしく呼びにくいため、すぐにケタリング・バグ(Kettering Bug:小さな機体を羽虫に見立て「ケタリング虫」の意)のあだ名が付けられて、こちらが有名になった。

 

 このケタリング・エアリアル・トーピードを簡単に説明してしまえば、小型の単発無人複葉機で、飛行距離と方向を事前に設定して発進させると、機器の制御により目標に命中するという仕掛けだった。

 

 初飛行は1918102日だったが失敗。やがて第1次大戦は終結し、ケタリング・エアリアル・トーピードが実戦に投入されることはなかったが、その後も1920年代まで試験は継続された。その間、命中精度は結局のところ最高で40%を上回ることはなかったが、この兵器の存在と研究成果は、第2次大戦勃発まで秘密扱いにされていた。

 

 無人で、搭載された機器に制御情報を事前に入力して目標に命中させる飛翔体であるケタリング・エアリアル・トーピードは、実戦でこそ使用されなかったが、今日の軍用ドローンの始祖のひとつといってよい「兵器」であった。

 

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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