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日本最強の鬼・酒呑童子を退治した猛者を祖先にもち、室町のころには全国に広がった名高い名族である「土岐家」とはどんな家系⁉【戦国武将のルーツをたどる】

戦国武将のルーツを辿る【第28回】


日本での「武士の起こり」は、遠く平安時代の「源氏」と「平家」に始まるという。「源平」がこれに当たるが、戦国時代の武将たちもこぞって自らの出自を「源平」に求めた形跡はある。だが、そのほとんどが明確なルーツはないままに「源平」を名乗ろうとした。由緒のあるか確たる氏素性を持った戦国大名は数えるほどしかいない。そうした戦国武将・大名家も、自分の家のルーツを主張した。絵空事も多いが、そうした主張に耳を貸してみたい。今回は室町時代の守護大名として名高い名族として栄華を極めた「土岐家」の歴史にせまる。


 

日本最強の鬼・酒呑童子を退治する様子を描いた『源頼光以下六勇士 鬼退治之図 』(東京都立中央図書館蔵)

 

 土岐(とき)家は、あの「大江山の鬼(酒呑童子)退治」で知られる清和源氏・源頼光から数えて7代目の孫に当たる光衡(みつひら)が、平安時代末期に美濃国土岐郡に本拠を構え、同時に「土岐氏」を称したのが始まりである。その子孫である土岐氏は、室町時代には守護大名として名高い名族である。

 

 惣領家の光貞(光定)は、鎌倉時代後半の執権・北条貞時(ほうじょうさだとき)の娘を妻としており、頼貞・頼兼が生まれた。だが、弟・頼兼は一族の多治見氏とともに「正中の変(正中元年・1324年に後醍醐天皇が鎌倉幕府打倒を計画したが、事前に発覚して失敗に終わった政変)」で、天皇側に与して失敗。失脚した。

 

 その後、足利尊氏(あしかがたかうじ)に従属した兄・頼貞は、足利幕府が開かれると、その功績によって美濃守護に任じられた。また侍所所司(次官)も任命されている。室町時代の守護大名として名高い名族である。

 

 南北朝時代には、土岐氏は家紋にちなんで「桔梗一揆」という一族による一揆を結び、一貫して足利方(北朝支持)として戦った。土岐氏は有力な足利支柱として活躍し、そうした功績が評価された。頼康・康行の代に土岐氏は、美濃に加えて尾張・伊勢の3カ国の守護を兼ね、一族は最盛期を迎えた。このように一族は繁栄したが、応仁の乱などにも巻き込まれて次第に国内は乱れていった。

 

 しかも明徳元年(1390)になると一族に内紛が発生するなどがあり、康行は足利幕府に反旗を翻したものの失敗に終わった。そのために尾張・伊勢・美濃の守護職を3代将軍・足利義満から剥奪された。こうした幕府の措置を受けて、土岐氏惣領家は頼忠の系統に交替する。そして、新しくなった土岐氏は翌年に起きた「明徳の乱(一大勢力だった山名氏が起こした反乱)」では、畠山・大内・細川氏らに与して山名軍と戦い、乱の鎮圧に一役買ったことから、美濃守護のみは返還された。

 

 こうした時代を経て、土岐家は多くの庶子(正妻以外から生まれた子ども)家を排出し、そうした庶子家の20余りの家が室町幕府の奉公衆になっていた。これが「桔梗一揆」の結束を崩す一因にもなった。

 

 本家である美濃守護・土岐家では家臣団による内紛がしばしば起きて、守護代・斎藤氏の台頭を許してしまった。同時に美濃国内では、豊嶋斎藤合戦・文明美濃の乱・舟田合戦など家臣同士の戦いが熾烈を極め、結果として斎藤氏の家臣になった山城(京都)出身の油売りとされる男(西村家を継ぎ、次に斎藤氏を乗っ取り守護代となる)・斎藤道三(利政)によって守護・土岐頼芸(よりのり)は、国外に放逐されてしまう。これによって美濃は道三のものになる。

 

 なお、先に見たように土岐氏の一族は全国に広がっていて、多治見氏・池尻氏・妻木氏・蜂屋氏など100以上に上っていた。この中に、明智光秀の「明智氏」も入る。また、戦国の世が終わり、徳川幕府になってからは、土岐一族から旗本になった者もあり、土岐明智氏の流れである土岐定政の系統は、寛保2年(1742)には上野・沼田藩3万5千石の大名にもなっているなど、明治維新まで存続した。

 

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江宮 隆之えみや たかゆき

1948年生まれ、山梨県出身。中央大学法学部卒業後、山梨日日新聞入社。編制局長・論説委員長などを経て歴史作家として活躍。1989年『経清記』(新人物往来社)で第13回歴史文学賞、1995年『白磁の人』(河出書房新社)で第8回中村星湖文学賞を受賞。著書には『7人の主君を渡り歩いた男藤堂高虎という生き方』(KADOKAWA)、『昭和まで生きた「最後のお殿様」浅野長勲』(パンダ・パブリッシング)など多数ある。

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