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春日局は家光の実母だった!? 次期将軍をめぐる実母・お江との激しいバトルの裏事情

日本史あやしい話


春日局といえば、徳川三代将軍・家光(竹千代)の乳母で、後に大奥に君臨した権力者である。家光の弟・忠長(国松)の実母・お江との確執も、よく語られるところであるが、最後に微笑んだのは春日局の方であった。その対立の構造がどのようなものであったのか、ちょっと覗き見してみたいと思うのだ。


 

■お福VSお江、対立にまつわる逸話の数々

 

 春日局(斎藤福、お福)といえば、徳川三代将軍・家光(竹千代)の乳母となったことを皮切りとして、大奥の総取締役として君臨したことは、多くの方の知るところだろう。その権勢は老中をも凌ぎ、幕政にも大きな影響力を及ぼした…というあたりが、世に流布されるところのお話である。

 

 もちろん、その権勢は、結果として自らが乳母として育てた竹千代こと家光が、三代将軍に上り詰めたことによるものであったことはいうまでもないが、将軍の座をめぐって、竹千代の弟・国松(忠長)の実母・お江(達子、崇源院)と、火花が飛び散るバトルが繰り広げられたということも、よく語り継がれるところである。

 

 となれば、竹千代に加担するお福VS国松を推すお江、この二人の対立の構造が気になるところだ。そもそも、なぜ竹千代が将軍に選ばれたのか?また、なぜお福が春日局として大奥に君臨することができるようになったのか?そのあたりを探り始めれば、思いの外興味深い逸話が、続々と耳に入ってくるから興味深いのだ。何はともあれ、まずはお福こと春日局の生誕から見ていくことにしよう。

 

■波乱に富んだ人生を歩んだお福こと春日局とは?

 

 父は美濃国の名族・斎藤氏の一族・利三であった。明智光秀の重臣で、所領として与えられた丹波国黒井城下の下館(興禅寺)が誕生の地である。父は本能寺の変で光秀に従って信長を討ったと見なされているが、その後の山崎の戦いで秀吉に敗れ、近江国堅田で捕らえられて磔の刑に処せられている。この時、お福4歳。父の処刑を目の当たりにしたとも伝えられているから、信長や秀吉に対して強い憎しみを抱いたことは間違いない。

 

 その後、母方の実家に引き取られ、13歳の頃、三条西家に奉公。ここで公家のしきたりや教養を身につけたようだ。さらに17歳の時に母の一族・稲葉正成の後妻となるが、正成の主家にあたる小早川家が無獅断絶を理由に改易。臣下であった正成も、妻子を抱えながら、厳しい浪人人生を歩むことに。もちろん、お福が苦境に立たされたことも想像に難くない。この時、たまたま目にしたのが、高札に掲げられていた竹千代の乳母募集の御触書であった。即座に応募するや、見事合格。前述したように、公家のしきたりや教養を身につけていたことが功を奏したという訳である。

 

 不思議なことに、この時、お福は夫と離婚したことになっている。その理由は明確ではないが、夫婦仲が悪かったということもあって、様々な説が飛び交っている。その一つが、「夫の浮気に愛想を尽かした彼女が、我が子を抱きかかえて家を飛び出した」というもの。その際、怒ったお福が「相手の女を殺した」とまで言われることもあるが、果たして?

 

 さらには、「自分まで仕官させようとしたことに腹を立てた夫が、妻に離縁を申し出た」というのもある。そればかりか、驚くことに乳母募集というのは名目で、その実、「お福がお江に女中として仕えている時に、秀忠の目に止まってお手つきとなり、結果として竹千代が生まれた」というのもある。つまり、「春日局が家光の実母」だったという訳だ。最初は単なる「乳養」、つまり乳をあげるとして召し抱えられただけにもかかわらず、その後も「御育て」として養育全般にかかわっていったというのも不思議。そればかりか、最後には、大奥の実権まで掌握するほどにまでにのし上がることができたというのも、彼女が家光の実母であったとすれば、すんなり納得できそう。無下に否定することは控えておきたい。

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藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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