男性の自慰行為「せんずり」【江戸の性語辞典】
江戸時代の性語98
我々が普段使っている言葉は時代とともに変化している。性に関する言葉も今と昔では違う。ここでは江戸時代に使われてた性語を紹介していく。
■せんずり
指で陰茎をこする、男の自慰のこと。
現代でも通じる言葉だが、いまはマスターベーション、あるいはマスということが多い。手こき、という言い方もある。
女の自慰をせんずりと言うこともあった。
(用例)
①春本『色長者』(西川裕尹か、明和8年頃)
色ついた娘は指せせり、声変わりはせんずりの奇特、いずれ色の世の中、
「指せせり」は指による自慰、「声変わり」は変声期の少年。変声期のころに、せんずりを覚える、という。
②春本『艶道智恵海』(不明)
男の子、五交情(せんずり)かき覚ゆると声変わりするが如く、娘も陰門探(つびせんずり)をかき覚えると、尻少し平たくなるものなれど、
男は自慰をすると声変わりし、女は自慰で尻がひらたくなる、という。はたして、どうだろうか。
③春本『巫山帖』(勝川春潮)
男が夜這いに来たが、目当ての女がいない。
男「はて、今夜はここに寝たはずだが。はて、どこへ行った。せっかく来たに、せんずりでもかいてしまえ」
女「おおかた、治介さんだろう。馬鹿な人だ」
男はしかたなく、自慰ですますつもりのようだ。
暗闇の中で、女は笑っている。
④春本『絵本笑上戸』(喜多川歌麿、享和3年)
女房に間男ができた。亭主と間男は話し合って今後、いっぽうが性交をするときは、もういっぽうは、そばで自慰ですますことで決着した。
亭主のとぼす時は、間男が後ろでせんずりをかく、また間男のとぼす晩は、亭主が向こうへまわって、せんずりをかく事に決着して、
亭主と間男は争うことなく、平和的な解決をしたのである。
⑤春本『笑本柳巷拾開花』(喜多川月麿)
男は早漏で、挿入前に射精してしまうことが多かった。またもや、失敗。
男「また、ごめん候(そうろう)。ええ、恥ずかしい」
女「これ、とぼす前は、せんずりをかいて、そして、したがよい」
女が男に、性交の前に、せんずりで射精しておけと助言している。
【図】は、早々と射精してしまい、女に事前のせんずりを勧められている男。

【図】せんずりを勧められる男(『笑本柳巷拾開花』/喜多川月麿)、国際日本文化研究センター蔵