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はじめての生理を「初花(はつはな)」と表現【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語87


ここでは江戸で使われていた「性語」を紹介していく。江戸時代と現代の違いを楽しめる発見がある。


 

■初花(はつはな)

 

 女の初潮のこと。初潮をむかえたことを、「初花が咲く」といった。

 図は、画中に「いまだ手の入らざる景色」とあるので、処女である。もう、初花は咲いたであろうか。

 

【図】初花は咲いたか、まだか。『会本妃多智男比』(喜多川歌麿、寛政7年)国際日本文化研究センター蔵

(用例)

 

①春本『会本色形容』(喜多川歌麿、寛政12年)

 

 ひとり娘に、おすけと言えるは、まだ初花の色盛り、世間評判の器量よしにて、

 

 初潮を経験したばかりの娘。初々しい娘盛りである。

 

 

②戯作『雑談紙屑籠』(十返舎一九著、文政3年)

 

 近所の娘の噂をして、

 

 この頃は、早や初花が咲いたとのこと。道理こそ、あの尻の大きさ。今に男持って、孕(はらみ)でもしられたら、

 

 

③春本『春情指人形』(渓斎英泉、天保9年頃)

 

 父親は張形などの性具作りの職人だった。そのため、娘は、

 

 歳に似合わぬおとなし者。しかれども、朝夕、細工場の女悦の道具を見習いて、初花咲きし頃よりも、自然と色気おこりしゆえに、

 

 初潮のころから色気づいたのである。

 

 

④春本『正写相生源氏』(歌川国貞、嘉永4年頃)

 

 女が、十四歳になる娘を妾奉公に出すことになった。娘がちゃんとセックスができるかどうか心配で、知り合いの男に相談する。

 

 男「色気が出めえが、体が小さかろうが、初花せえ咲きゃあ、随分、間に合うということだぜ」

 女「もちろん、それにしちゃあ、ちっと早いほうかして、こうと、去年の霜月あたりから体も汚れましたがね」

 

 女は初潮さえすめばセックスは可能だと、男は受け合っている。

「体が汚れた」は、生理が始まった意味である。

 

 

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永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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