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女性器を意味する「玉門」【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語84


ここでは江戸で使われていた「性語」を紹介していく。江戸時代と現代の違いを楽しめる発見がある。


 

■玉門(ぎょくもん)

 

 女性器のこと。膣をさす場合もある。

 玉門を「ぼぼ」と読ませる場合も多い。

 

 

【図】処女の玉門をまさぐる。『恋のやつふじ』(歌川国貞、天保八年/国際日本文化研究センター蔵)

 

(用例)

 

①春本『祝言色女男思』(歌川国虎、文政八年)

 

 男が後家に夜這いをかける。

 

 そろりそろりと夜着の裾、だんだんまくりて片手を入れ、足のほうよりなであげれば、後家は見し心地して、うんと言って寝がえりすれば、せんより股をひろげしゆえ、なおも片手を差し入れて、玉門近くなでまわせば、やわやわとして、むっちりと、その心地よさ、こらえかね、

 

 ついに陰茎を挿入する。

 

 

②春本『天野浮橋』(柳川重信、天保元年)

 

 女がいやがるのを、男は強引に迫る。

 

 無理に割り込み、玉門に押し付ければ、

「わたしゃ、まだ初めてだよ。静かにしておくれ」

「どうだか知れねえ」

「本当だよ」

「静かにするよ」

 と、唾(つばき)をどっさりつけ、玉門を指にてくじり、一物をつまみ、口元にあてがい、そろそろ入れかけ、腰を使えば、しっかと締める。ずるりずるりと押し込めば、根まで入ると、

 

「静かにして」は、やさしくして、そっとして、という意味。

 唾は、陰茎に塗った。潤滑剤の役目である。

 

 

③春本『華古与見』(歌川国芳、天保六年)

 

 お春は十六、七歳である。

 

 時をはかりし六三郎、ここぞと思い定めけん、さもかわゆらしき玉門へ、ずぶずぶずぶと押し込めば、お春は、

「はあっ」

 と反り返り、新開(あらばち)このかた覚えぬ業物(わざもの)、

 

 六三郎の陰茎は、お春にとって初体験以来の巨根だった。

「新開」は第17回参照。

 

 

④春本『恋のやつふじ』(歌川国貞、天保八年)

 

 処女の娘を破瓜する場面。

 

 ぶるぶるふるえる可愛らしさ。白羽二重のごとく、すべすべとやわらかき腿を開かせれば、まだようように薄々と、ひたいぎわに毛が生えたか、生えぬという玉門、水紅のように少し色気あるを見れば、男はたまりかねて、

 

 図は、上の場面である。

 

 

⑤春本『正写相生源氏』(歌川国貞、嘉永四年)

 

 十四歳の処女を破瓜する場面。男が自分の陰茎を、娘に握らせる。

 

男「しっかり握って、上へやったり下へやったり、してみなよ」

女「おかしなもんだねえ」

男「なに、おかしいものか」

 と、ここにしばらく気をうつさせ、そろそろとなでて、玉門へ中指一本はめてみるに、吐淫というはさらになけれど、ずるずる入れば、まずはしめたりと、

 

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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