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たたらの鉄づくり――「五箇伝と刀工流派のすべて」こぼれ話

「歴史人」こぼれ話・第3回

武士の美と魂は、たたらに始まる

たたら製鉄における踏み鞴による送風作業
『日本山海名物図会』平瀬徹斎編/国立国会図書館蔵

「古代の製鉄法は「たたら吹き」といわれていた。たたらとは大きな「ふいご」のことで、原料の砂鉄を坩堝(るつぼ)に入れ、たたらを踏みながら空気を送り、精練する。一般的に和鉄の製鐵法を「たたら」と称した。

 

 いまは刀剣といっても美術工芸品として扱われるだけだが、武家社会では、命のやりとりに必要なものだった。とくに江戸時代、刀は武士の魂ともいわれ、刀身を作り出す刀鍛冶は、職人の中でも重んじられる存在だった。

 

 仕事場は神聖な場とされており、二間(約3.6m)四方くらいの仕事場では注連縄(しめなわ)をめぐらせ清めた。むろん職人も身を清めて仕事にのぞんだ。たたらを使いこなして鋼を溶かし、槌で刀身に仕上げていったのだ。

 

古代人が崇拝する元となった伝説

八俣大蛇を退治する須佐之男
『神代物語』佐藤小吉著(大日本図書)/国立国会図書館蔵

 いずれにせよ、鉄の出現は日本列島の社会や文化を大きく変えた。鉄製の農耕具は耕地の拡大を容易にした。鉄製の武器は支配者たちの力を強大なものにした。階級社会への変化を容易にしたともいえる。

 

 たたら吹きで栄えたのは、吉備や出雲だった。出雲の「八俣大蛇(やまたのおろち)伝説」を知る人は多いだろう。須佐之男(すさのお)が八俣大蛇を退治したところ、大蛇の尾から草薙(くさなぎ)剣が出てきたという話だ。大蛇が切り倒されたとき、流れ出した大蛇の血で斐伊(ひい)川が真っ赤に染まったという。

 

 砂鉄を採取するため、川床を堀り、土砂の中から砂鉄を選別する。この鉄穴流(かんななが)しと呼ばれる作業によって川は濁るというが、上の伝説はそれを反映したものともよめる。

 

 また草薙剣は出雲で生産された良質の鉄刀をあらわしているとも考えられる。鉄で栄えた出雲の様子が、伝説に反映されているようだ。

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中江克己なかえかつみ

北海道函館市生まれ。河出書房などの編集者を経て歴史作家に。著書は『大江戸〈奇人変人〉かわら版』(新潮文庫)、『忠臣蔵と元禄時代』(中公文庫)、『お江戸の意外なモノの値段』(PHP文庫)、『日本史の中の女性逸話事典』(東京堂出版)など多数。

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