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「番太郎」のお仕事――盗賊を取り締まる!? 地味でも役立った長屋自治の要

「歴史人」こぼれ話・第2回

地主自身が詰めた昼の自身番と、夜の外歩きを禁じた番太郎の存在

四谷大木戸「江戸名所圖會」松濤軒齋藤長秋(斎藤幸雄編)/都立中央図書館蔵

 江戸の町には犯罪防止のために、自身番や木戸番が設けられていた。

 

 自身番は地主自身が交代で番所に詰めたが、木戸番小屋はそれより規模が小さく、木戸の開閉を管理する番人が住み込んで仕事をした。

 

 長屋の住人は、親しみをこめて番人を「番太郎」と呼んだ。木戸を閉めるのは夜四つ(午後10時頃) ごろ。それ以降は、番くぐり戸を通らなければならない。遅い時刻だと、番太郎に理由を話して通してもらうのが決まりだった。ただし、医者とか産婆(助産師)の場合、急を要するし、顔なじみということもあって何を言わなくても通行できた。

 

 くぐり戸を通るときは、番太郎が拍子木を打ち、つぎの木戸へ知らせる。これを「送り拍子木」と称した。

 

放火事件と盗賊を取り締まることが江戸治安の第一

 

 木戸を夜間に閉めるのは、夜の外歩きを禁じるためだ。幕府が恐れていたのは放火事件だから、木戸の通行を勝手にしておくと、不審者が夜中に歩き回って放火しないとも限らない、と用心していたのだ。

 

 番太郎は町内の夜警にまわり、拍子木を打ちながら時刻を知らせた。万一、町内では捕物があれば木戸を閉めて犯人が逃亡するのを防ぐなど、協力した。

 

 木戸は町営だから、番太郎の給金は町内で払うが、少額なので暮らしていけない。そのためここで駄菓子や草鞋、鼻紙などを売った。冬の人気商品は焼き芋だが、駄菓子屋では火を使うのは現金だから、番太郎の専業だった。

 

 表向き、番太郎は独身に限るとされていたが、意外に夫婦者が多かった。番太郎の仕事は夜が忙しく、昼間は寝ている。副業は女房がやらざるをえないので、夫婦ですみこむことは黙認されていた。

 

長屋の暮らしを影で支えていた番太『道中膝栗毛』/国立国会図書館蔵

 

 

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中江克己なかえかつみ

北海道函館市生まれ。河出書房などの編集者を経て歴史作家に。著書は『大江戸〈奇人変人〉かわら版』(新潮文庫)、『忠臣蔵と元禄時代』(中公文庫)、『お江戸の意外なモノの値段』(PHP文庫)、『日本史の中の女性逸話事典』(東京堂出版)など多数。

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