古墳かどうかの見極め方 ~トレンチという溝のような調査坑で自然の丘か人工物の古墳かがわかる
[入門]古墳と文献史学から読み解く!大王・豪族の古代史 #003
16万基以上の古墳遺跡、調査には許可も必要

大阪市天王寺区 茶臼山は古墳?!
日本に古墳っていくつあるか、ご存知でしょうか?
大きなものから小さなものまで合わせると、現在確認されているだけで16万基以上あるとされています。全国のコンビニエンスストアの3倍もあるというのですからびっくりしますね。
古墳好きにアルアルなのは、こんもりしている小さな丘を見かけると「あ、古墳かも!」とコーフンすることでしょうか。こんもりしているのが全部古墳だったら、これまた大変な数になるでしょう。では、古墳なのか単なるボタ山なのかはどうすればわかるのでしょうか?
文献や地域に残された伝承は大切ですが、やはり調査をしてみないとわかりません。
遺跡の調査は地権者や都道府県知事市町村長の許可も必要ですので、専門家が行います。
トレンチという溝のような調査坑を掘って調査すると、自然の丘か人工物の古墳かがわかります。もちろん石棺や石室のような埋葬施設、もしくは祭祀用の土器などが出土すればビンゴです。
それと掘ってみたトレンチの壁面に、バウムクーヘンのような何層にも突き固められた様子があったりすると人工物であることの証拠になります。

カズマ山古墳(奈良県)調査トレンチ画像
大阪の天王寺区には、大坂冬の陣では徳川家康が本陣を敷き、夏の陣では真田幸村が陣を置いた「茶臼山」があります。ここは古墳だといわれてきました。また、出土したと伝承のある石棺材もありますが、実は古墳である決定的な証拠が出てきていません。つまり埴輪の破片や葺石のかけらも発見されていないのです。
さらには8世紀に和気清麻呂が上町台地を開削した時の廃土山ではないかという説まで出てきています。大阪という大都会の真ん中にある小山ですし、大坂の陣という大戦争に利用された丘ですので都合のいいようにどんどん工事もされましたから、古墳だったのかどうかの証拠がはっきり出てこないのです。
古墳だったとしても円墳だったか前方後円墳だったか? その形状すらわかりません。ただすぐそばにある聖徳太子が建立した四天王寺にかかわる「荒墓(=古墳)に建立した」という記録と整合性があるような気もします。
古墳は様々に利用されてきました。取り巻く堀を環濠といいますが、これは農業用水に利用されますし、こんもりとして見通しがいいので戦国時代には砦に使われたり、頑丈に土を固めて造ってあるので昭和の戦争時には高射砲台に使われたりしたものまであります。
今でこそ貴重な古墳を守ろうという価値観がありますが、つい最近まで邪魔な古墳は潰されましたし、頂上付近を平らに削って利用されたりしてきたのです。
天皇陵や皇后陵、陵墓参考地は宮内庁の管理ですが、調査をしないといつの時代の古墳かは正確にわからないものです。全ての古墳の調査が許されれば、日本だけでなく東アジア全体の古代史が大きく解明されるのでしょうが・・・。
(次回に続く)