「中国化」が進むラオスの実態 「経済的侵略」で切り崩される国家
東南アジアの小国ラオスが、今、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の荒波に呑み込まれ、国家の輪郭を急速に変容させている。内陸国ゆえの経済的不利を打破すべく、ラオス政府は「陸鎖国から陸結国へ」というスローガンを掲げ、中国からの巨額融資を背景にした大規模なインフラ開発に活路を求めた。しかし、その代償として突きつけられたのは、国家主権を実質的に侵食しかねないほどのチャイナリスクと、経済的従属という過酷な現実である。
ラオスの中国化を象徴するのが、2021年に開通した総延長約1000キロメートルに及ぶ中国・ラオス鉄道である。総事業費約60億ドルのうち、ラオス側の負担分の多くは中国輸出入銀行からの融資で賄われた。この鉄道は、内陸に封じ込められていたラオスを中国市場と直結させる希望の光と喧伝されたが、実態は中国の物流網をインドシナ半島南部へと延伸させるための巨大な導管に過ぎない。運営権の多くを中国側が握り、沿線の開発優先権も中国企業に付与される中で、ラオスが得る直接的な収益は限定的であり、むしろ巨額の債務返済という重圧が国家財政を窒息させている。
さらに事態を深刻化させているのが、エネルギー分野における債務の罠の具現化である。ラオスは豊富な水資源を活かした「東南アジアのバッテリー(発電所)」を目指し、数多くのダム建設を中国資金で進めてきた。しかし、債務が返済不能なレベルまで膨らんだ結果、2020年にはラオス国営電力会社(EDL)の支配権が事実上、中国企業(中国南方電網)へと譲渡される事態に至った。送電網という国家の基幹インフラを他国に委ねることは、文字通り経済的な生命線を握られることを意味する。これは武力を用いない、極めて現代的な形式の経済的侵略の一形態と言わざるを得ない。
現在、ラオスの対外債務は対GDP比で100%を超え、その多くが対中債務であると推定されている。通貨キープの歴史的な暴落と深刻なインフレが国民の生活を直撃する中、政府にはもはや中国からの追加融資や返済猶予に縋る以外の選択肢がほとんど残されていない。国内では中国企業による経済特区が次々と誕生し、そこでは中国語の看板が並び、事実上の治外法権的な空間が広がっている。ラオスの土地、資源、そしてインフラが切り売りされ、国家全体が中国の経済システムの一部へと組み込まれていく過程は、周辺諸国にとっても他人事ではない。
ラオスのケースは、開発途上国が急速な成長を求めるあまり、透明性を欠いた不透明な融資に依存することの危険性を雄弁に物語っている。中国の戦略は、相手国の脆弱なガバナンスを突き、不可欠なインフラを担保に取ることで、長期的かつ不可逆的な影響力を確立することにある。この「静かなる浸食」に抗う術を持たないまま、ラオスは今、国家としての自律性を喪失し、中国の「属国」へと転落する瀬戸際に立たされている。

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