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ゼウスの子を孕んだ美女をとことん追い詰めたヘラ 身ごもった女神と神々の「極秘出産計画」とは

ギリシア神話の世界


 

■ゼウスの正妻・ヘラの恐るべき嫉妬心

 

 最高神ゼウスが浮気をしたら、正妻である女神ヘラの怒りの矛先は相手の女性や子どもに向けられる。嫉妬深いことで知られるヘラの報復は限りなく執念深く、かつ容赦のないものだった。

 

 ゼウスがティターン神族を両親に持つレトと密会を重ね、妊娠したレトが臨月を迎えようとした時のこと。レトを受け入れないようヘラから通達が発せられていたせいで、レトはどこに行ってもすぐ立ち退きを迫られ、身重の身体を抱えての放浪を余儀なくされた。

 

 そんななか、ようやくエーゲ海上のひとつの浮島がレトを受け入れてくれた。生まれてくる子の由緒ある地として尊ばれ、きらびやかな神殿が設けられるのを誇りに思ったからとも、参拝者のもたらす経済効果を期待してのこととも言われるが、レトにとってそんなことはどうでもよく、落ち着ける場所を確保できただけでもありがたかった。

 

 けれども、本当の地獄はそれからだった。レトに同情する女神たちが彼女を励まし、出産を見守るために集まってきてくれたが、そこには最も重要な女神の姿が欠けていた。出産の女神エイレイテュイアである。この女神はゼウスとヘラの間の娘で、ヘラに極めて忠実だった。いかなる女神もエイレイテュイアの立ち合いなしで出産することはできず、彼女が来るまでひたすら陣痛に耐えるしかなかった。

 

 耐え難い陣痛に見舞われること9日9夜。さすがに見かねた女神たちは虹の女神イリスに豪華な首飾りを約束して、オリュンポスへと遣わした。虹の女神にかかれば、どんなに遠いところでも瞬時に行ける。羽がないから羽音もたたず、ヘラに気づかれずにオリュンポスまで達し、エイレイテュイアの屋敷を訪れることもできた。

 

 イリスの言葉には神の心をも溶かす力もあったため、ヘラに忠実なエイレイテュイアもレトへの同情心でいっぱいになり、助力を約束。それを聞いたイリスはヘラに気づかれぬようエイレイテュイアを連れ出した。

 

 イリスがエイレイテュイアを伴ってデロス島に戻ってきたので、レトはようやく無事に一男一女を生むことができた。男子は太陽神にして予言・音楽・医術の神でもあるアポロン、女子は月の神にして狩猟と弓術の女神でもあるアルテミス。レトはとりあえずデロス島を4本の柱で固定することで、自分を受け入れてくれたデロス島へのお礼とした。のちには期待されたように、デロス島はアポロン神最大の聖地として多くの巡礼者を集めることとなった。

デロス島の遺跡/写真AC

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島崎 晋しまざき すすむ

1963年東京生まれ。立教大学文学部史学科卒業。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て、現在、歴史作家として幅広く活躍中。主な著書に『歴史を操った魔性の女たち』(廣済堂出版)、『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』(日本文芸社)、『仕事に効く! 繰り返す世界史』(総合法令出版)、『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『覇権の歴史を見れば、世界がわかる』(ウェッジ)など多数。

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