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最高位の女神・ヘラとゼウスの壮絶すぎる略奪婚 「ジューン・ブライド」を生んだ嫉妬深すぎる女神

ギリシア神話の世界


 

■ゼウスとヘラの結婚

 

 ギリシア神話の最高神ゼウスの姉にして正妻。恐ろしいまでに嫉妬深い。女神ヘラの紹介はこのようにされることが多い。

 

 もとから嫉妬深いのか、多情なゼウスのせいでそうなったのかは何とも言えないが、最高神に直接当たることはできないので、度を越した怒りの矛先を相手の女性とその子どもに向け、意地悪にとどまらず、時には何の躊躇いもなく破滅に追いやるのがヘラの恐ろしいところである。

 

 だが、ヘラの結婚にしてから、決して胸を張って言えるものではなかった。最初、ゼウスは思慮の神メティスを妻としていたが、彼の父クロノスと同じく、支配者の座を子に奪われるとの予言を受けたため、それを防ごうと、メティスを丸呑みしてしまった。

 

 これにより、ゼウスはメティスの持つ知恵をすべて受け継ぐことになるが、その知恵をもっぱら狙い定めた女性をものにするために使用した。ティターン神族の両親から生まれた掟の女神テミスと情を重ね、季節の3女神と運命の3女神をもうけるが、ゼウスはそれくらいでは飽き足らず、テミスとの関係を続けながら、姉のヘラにも欲情を募らせていた。

 

 ついに欲情を抑えられなくなると、ゼウスはひどく寒い日を選び、鳥のカッコウに姿を変えて彼女に近づいた。外で寒さに震えるカッコウを見て憐れみを催したヘラがカッコウを抱いて屋内に入れると、ゼウスは本来の姿に戻り、ヘラに男女の関係を迫った。

 

 貞操観念の強いヘラはゼウスの求めを突っぱねるが、ゼウスから執拗に求められると、正妻にすることを条件に受け入れることにした。大喜びしたゼウスはテミスとはきっぱり別れ、ヘラと正式に結婚するが、この時はまだ知る由もなかった。ヘラの嫉妬心が常識の範囲をはるかに超えたレベルであることを。

 

 それはともかく、ヘラはゼウスとの結婚を境に、結婚・出産・家庭の婦人を守る神として、信者たちに厳格な一夫一婦制を課すようになった。それらの属性をもとからのものとするバージョンもあるが、その違いは些末なこと。結婚を人生最大の通過儀礼と捉える人びとから篤く信仰されるところとなった。

 

 ヘラの名はローマ神話ではユノとなり、それの英語読みJuneは「ヘラの月」とも呼ばれた。6月に結婚した花嫁は幸せになれるとの俗信「ジューン・ブライド(6月の花嫁)」は、ヘラの属性と彼女にまつわる神話から生まれたのだった。

イメージ/イラストAC

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島崎 晋しまざき すすむ

1963年東京生まれ。立教大学文学部史学科卒業。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て、現在、歴史作家として幅広く活躍中。主な著書に『歴史を操った魔性の女たち』(廣済堂出版)、『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』(日本文芸社)、『仕事に効く! 繰り返す世界史』(総合法令出版)、『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『覇権の歴史を見れば、世界がわかる』(ウェッジ)など多数。

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