大混雑の世界遺産を避けてのんびり京都散歩 神泉苑/京都府京都市
神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第32回】
津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。

法成就池(ほうじょうじゅいけ)。平安京より以前からあったという
■エアスポット的な京都を楽しむ
大きな寺社は山や森を含んでいることが多いので、いろんな動物が住んでいるところも珍しくありません。たとえばクジャクが境内にいるとか、ニワトリが飼われているとか、様々なケースがあります。シカ目的で奈良公園に来る人なんかもかなり多そうですね。完全に余談ですが、ジャムパンを食べてたら奈良公園でシカに囲まれていたことがありますし、広島県の厳島(宮島)では食べ歩きをしていたらシカに街中をしばらく尾行されました。
今回は寺社の来歴からは想像しづらい動物がいるスポットを紹介します。京都の世界遺産の一つ、二条城のすぐ近くに神泉苑(しんせんえん)という寺院があります。「〇〇寺」とか「〇〇院」ではなく、「〇〇苑」という表記は寺としては珍しいと思われるかもしれません。これはこの土地が平安時代の前期から貴族が遊ぶ庭園として使われていたことに関係します。また、空海が雨ごいの修法をこの場所で行ったこともあります。その後、荒廃した時期もありますが、江戸時代初期に真言宗のお寺として再スタートしました。その際に護国寺という名前がついたはずですが、今では神泉苑という名前でほぼ通っています。
この神泉苑、今でも寺院というより池の面積が広い庭園といった印象なのですが、境内を歩いているとなにやら白いものが地面の上に落ちているのが目につきます。よく見ると(よく見ないでも)アヒルです。このお寺、アヒルちゃんを飼っていて、のんきに過ごしています。僕が訪れた時には境内にあるお社(全体的に見ても神社っぽいお寺です)の真ん前にアヒルが陣取ってひなたぼっこしていました。

ひと休みしているアヒル
飼われているのか勝手に暮らしてるのか不明ですが、ほかにも池にはカモがいますし、ハトもそのへんを歩いています。いちいち撮影してなかったので記憶だのみですが、カラスも境内をうろついていた気がします。すべての鳥類がだらけています。江戸幕府の権威の象徴のような二条城から道路一本隔てただけで、ここまでのんびりした空気に変わるものなのかと思います。
京都の有名どころを順番に回るような観光をしていると、二条城を見ても近くの寺社はパスされることが多いと思います。ですが、そこは京都の底力と言いますか、二条城とは全然違った方向性で楽しい場所がすぐ近くにあるので、ぜひこちらにも足を延ばしてみてください。
また、京都市右京区の梅宮(うめのみや)大社は、大社と名がつくぐらいで格式が高いことは言わずもがなですが、境内でたくさんの猫ちゃんが飼われています。境内を気ままにうろちょろしているので出会えるという確証はないですが、人なつっこい子が多いので、日ごろの行いがよければ出会えるでしょう。京都観光では少しエアポケット的な場所ではありますが、だからこそ一般的な京都観光とは一味違う旅行を楽しめます。阪急の松尾大社駅(まつおたいしゃえき)から徒歩で行けます。

神泉苑の中央の島に祀られている善女龍王社