【お盆の謎】「盆おどり」は誰のためにおどるのか?
夏の伝統風習「お盆」を知る! 【第4回】
今週からお盆のシーズンに突入! 家族での帰省や行楽で、全国各地が賑わう時期でもある。日本の伝統的な風習であるお盆は、そもそもどのような目的でいつ頃からはじまったのか? 墓前の灯籠(とうろう)、送り火、盆おどり、精霊流しなど、お盆にまつわる行事、地域や宗派ごとの相違点、タブーもふくめて、意外に知らないお盆の謎をわかりやすく解説する。
■戻られたご先祖さまを歓待する「盆おどり」

日本各地で行われる盆おどり。開催期間は8月13〜16日が多い
夏の風物詩のひとつである盆おどり。本来は亡くなった方の霊を迎えて慰めるためのおどりで、ご先祖さまをおもてなしして、供養する思いが込められている。その目的は、① お盆にはご先祖さまの霊が戻って来るので、これを歓待するためにおどる ②新盆を迎えたばかりの故人の霊はまだ不安定だから、鎮魂するためにおどる ③ お盆に紛れて近寄る悪霊などを追い払う、が考えられている。
盆おどりの起源は、平安時代の中期に浄土教をひろめた空也上人(くうやしょうにん)がはじめた「踊り念仏」にさかのぼるという。踊り念仏から、節に合わせて念仏を唱えるという行為が広まり、念仏に合わせておどるようになったことが盆踊り誕生のきっかけとなった。この初期の盆おどりが、先祖を供養する盂蘭盆会(うらぼんえ)と結びついたことで、現在の盆おどりを確立したと考えられている。
踊り念仏は、鎌倉時代の僧侶である一遍上人(いっぺんしょうにん/時宗開祖)によってさらに広まり、庶民の娯楽として定着した。江戸時代になると盆おどりは絶頂期を迎え、娯楽性が高まり、男女の出会いの場としても賑わった。明治時代になると、風紀を乱すとの理由か一部で禁止令が出たところもあった。やがて昭和になると、盆踊りも再び元気を取りもどし、地域によっておどり方や囃子、伴奏が異なるようになり、こどもから大人までが楽しめる人気のある娯楽に変貌した。
■観光資源となった「日本三大盆踊り」
お盆に帰ってきたご先祖さまを、おどりを通して供養する行事であった盆おどりだが、やがて仏教行事的な意味合いは薄れ、娯楽的な意味合いが重視されるようになった。江戸時代以降は、人々の交流場として各地で親しまれるようになったのだ。ちなみに日本には、「日本三大盆踊り」に認定されたお祭りがある。それは「阿波踊り」(徳島県)、「郡上踊り」(岐阜県)、「西馬音内(にしもない)盆踊り」(秋田県)の3つで、踊り方、掛け声、おどりに興じる時間帯など、それぞれ特徴がある。「日本三大盆踊り」は、全国各地から観光客を引き寄せ、昨今ではインバウンドによる外国人観光客も増加中だ。
盆踊りが行われるのは、8月13日~16日の間に開催されるところが多いが、地域によっては、16日以降も「地蔵盆」や「裏盆」に踊り日を設けるケースがある。地蔵盆は近畿地方で特に盛んだ。旧暦8月1日(新暦の9月ごろ)の「八朔」(はっさく)を盆踊りの日とする地域(富山県、長野県、奈良県の一部など)もある。
盆おどりの会場には、やぐらが組まれ、その上の太鼓が置かれる。そして、音頭取りの合図で、やぐらの周囲をまわりながら音頭に合わせておどること一般的だ。やぐらが設置されるのは、盂蘭盆会の迎え火や送り火の代用として、やぐらに提灯が取り付けられた名残でもある。
おどりの伴奏音楽は、いつ頃から定着したのかは不明だが、現在では「東京音頭」、「炭坑節」など地域にまつわる定番の音頭の他、アニメ・ソングが奏でられることも多い。