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大河ドラマ『べらぼう』遊女うつせみは意外と売れっ妓だった? 特別待遇の遊女と厳しいヒエラルキー


大河ドラマ『べらぼう』の5回「蔦に唐丸因果の蔓」では、松葉屋の遊女・うつせみ(演:小野花梨)の元に、平賀源内と行動を共にする浪人・小田新之助(演:井之脇 海)が通っている様子が描かれた。うつせみは控えめで「わっちなんて…」というタイプ。そんなピュアなところにも新之助は惚れ込んでいるようだが、実は彼女は松葉屋きっての売れっ妓である。今回は遊女のヒエラルキーについてみていこう。


 

■うつせみは松葉屋のナンバー3か?

 

 さて、うつせみは松葉屋の「座敷持ち」というランクの遊女である。座敷持ちは「呼出」の下のランクにあたり、自分の部屋とは別に客の相手をするための座敷を与えられている。いわば中堅遊女だ。

 

 ちなみに、松葉屋で最上級の呼出にあたるのは、トップの松の井やナンバー2の花の井といった花魁である。彼女たちは引手茶屋を通して客から指名が入ると、自分についている新造(一人前になる前の見習い遊女)や禿を引き連れて客の元に出向いていた。当然、張見世には出ない。

 

 座敷持ちであるうつせみは花の井ら花魁のように“花魁道中”は行わない。ただし、自分の身の回りの世話をしながら作法や手練手管を学ぶ禿、そして新造がちゃんとついている。それはつまり、禿や新造の衣装代や教育にかかる金ものしかかっているということだ。

 

 座敷持ちの下には「部屋持ち」がいて、彼女らは自分の部屋は持っていたが、客の相手をするための座敷は与えられていない。それでもまだ個室があるだけましで、部屋持ち以下の遊女は「廻し部屋(割床)」と呼ばれる共用の大部屋で過ごし、屏風一枚を隔てて客をとっていたという。

 

 そういうわけで、うつせみは花魁たちに比べれば“パッとしない”風であるが、実際は松の井や花の井に次ぐランクの遊女なのである。部屋と座敷が与えられるという特別待遇で、揚げ代もそれなりに必要だった。

 

 一方の新之助は、御家人の三男坊として生まれたが、とある理由で出奔。現在は平賀源内と共に炭売りをしながら長屋で暮らしているという。果たして、そんな彼が松葉屋を支える遊女の1人であるうつせみの揚げ代を払い続けられるのだろうか?

 

 もちろん日々コツコツ金を貯めて…というのも考えられるが、当時、遊女たちは自分が惚れた客の揚げ代を自腹で払うこともあったようだ。もしかすると、うつせみもそうやって新之助との逢瀬の機会を得ているのかもしれない。純真な2人の恋模様は吉原においては明るい未来が見えるものではないが、今後注目すべきポイントだろう。

座敷持ちの遊女。奥には布団が敷かれている。
『廓宇久為寿』国立国会図書館蔵

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歴史人編集部れきしじんへんしゅうぶ

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