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大河ドラマ『べらぼう』平賀源内と歌舞伎役者らの艶めかしい関係 陰間茶屋で男娼として性を売った美少年たち


大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』2話「嗚呼御江戸」では、平賀源内(演:安田顕)が亡き想い人である女形の二代目瀬川菊之丞の面影を求め、その心を汲んだ花の井(演:小芝風花)が機転をきかせて役者姿で現れる、というストーリーが描かれた。源内は史実でも“男ひと筋”の男色家だった。今回は源内が愛した江戸の陰間と歌舞伎の関係をひも解く。


 

■美少年の歌舞伎役者見習いを贔屓にした源内

 

 平賀源内といえば本草学者、地質学者、蘭学者、医者、殖産事業家、戯作者、浄瑠璃作者、俳人、蘭画家、発明家など、様々な顔を持ち、“江戸のレオナルド・ダ・ヴィンチ”とも称されるほど、マルチな才能で活躍した人物である。一方で、男色を好む者が両性愛者であることが多かった江戸でもやや珍しい、生粋の男色家であったことも知られている。大河ドラマでも描かれたように、とくに女形(おやま)として絶大な人気を誇った二代目瀬川菊之丞とは深い仲だった。

 

 源内は芳町(現在の日本橋人形町付近)の男娼街に足繁く通っていたと、狂歌師の大田南畝も自身の随筆に書き残している。芳町には陰間茶屋が数多くあった。「陰間」とは、客を相手に男色を売った男娼の総称で、とくに10代の若い美少年が性を売っていた。

 

 本稿では詳細な経緯や背景は割愛するが、当時陰間茶屋には歌舞伎役者として舞台にあがる前の少年らが多くいた。源内もまた、こうした陰間たちを贔屓にしていたらしい。陰間茶屋を紹介した『江戸男色細見』や陰間の評判記である『男色品定』も書いたくらいだ。

 

 男方(立役)と女方(女形)両方が売春を行っていたが、とくに女形は当時日常生活も女性として過ごしていたといわれており、若いうちに陰間として体を売り、色っぽさを身に着けるべしとさえ思われていたようである。

 

 文化11年(1814)に刊行された『塵塚談』には、「この色子ども末々は皆役者になれり、女形は多くはこの者どもより出で来て、上手と云ふ地位に至りしも多くありける」と記されている。つまり、女形の多くが陰間の経験があり、なかには女形として大成功をおさめる者もいた、というのである。

 

 瀬川菊之丞だけでなく、『べらぼう』でも重三郎が朝顔に読み聞かせていた男色戯作『根南志具佐』に登場する女形の荻野八重桐とも深い仲にあったらしい。この作品は、隅田川での舟遊び中に溺死した八重桐へのレクイエムであり、恋しい想いを昇華させるものであったとも考えられているのだ。

 

 さすがに大河ドラマでは菊之丞への恋慕も「舞の練習をよく見ていた」というソフトな描写に留まっていたが、実際は若い(というよりも幼い)頃から贔屓にしていた性愛の対象であった可能性が高い。

 

※画像は『江戸男色細見』の序文の後に掲載された挿絵。

『江戸男色細見』の挿絵。陰間を連れている。
国立国会図書館蔵

<参考>

安藤優一郎『江戸文化から見る 男娼と男色の歴史』(カンゼン)

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歴史人編集部れきしじんへんしゅうぶ

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