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挿入するとふくれあがる「麩魔羅(ふまら)」【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語77


ここでは江戸で使われていた「性語」を紹介していく。江戸時代と現代の違いを楽しめる発見がある。


 

■麩魔羅(ふまら)

 

   麩は乾燥しているときはスカスカだが、水分を含むとグンニャリとなる。そうした麩の連想からは、麩魔羅は萎えた陰茎のようである。

 だが、春本・春画の世界では麩魔羅の評価は高い。

 一見すると、ふにゃふにゃして勢いがないかのようだが、いったん膣の中に挿入されると、ふくれあがるという。

 図では、女が男の陰茎を「またと日本にはあるまい」とほめている。

 

(用例)

①春本『女大楽宝開』(月岡雪鼎、宝暦年間)

 

 麩魔羅を陰茎の第一とするのは、

 

 麩のごとく、やわらこうて、玉門広き狭きをえらばす、開中にて太くなり、風味いたって絞まりよきゆえに、一麩と定む。

 

 どんな陰門であっても、麩魔羅は中で太くなるため、締まりがよく感じるのだ、と。

 「開中」は膣の中の意味。

 

②春本『艶道日夜女宝記』(月岡雪鼎、明和元年頃)

 

 麩はやわらかにして、開中のあたりよし。いかようの玉門に合わせてもよきなり。

 

 「麩」は麩魔羅のこと。

 

③春本『漢楚艶談』(歌川国政、天保三年)

 

 男が、十六歳の処女を破瓜する。

 

 女「およしな、鉄槌とやらのような、おまえの物を入れたら破れるだろう」

 男「怪我をさせるようなことをするものか。大きくても麩魔羅だから、じっとしていな」

 女「痛くないようにしておくれよ。怖いようだがね、そのくせ、してみたいよ」

 

④春本『花以嘉多』(歌川国芳、天保八年)

 

 池次郎が一物(いちもつ)は、うわぞりの大道具にて、そのうえ俗に麩魔羅と呼ぶ、自由自在のきく一物なれば、新鉢(あらばち)などの時には、我が手にてしっかりと握りつめて、あてがえば、やわらかく細くなりて、ぬるぬると入り、開中にていっぱいに広がるゆえ、女の方には至って美快なること、たとえるに物なく、

 

 「新鉢」は処女のこと。第17回参照。

 麩魔羅がどのような陰茎か、よくわかる。

 

⑤春本『仮枕浮名仇波』(歌川国政、安政元年)

 

 男が陰茎を挿入すると、

 

 ぬっと入るれば、ずるずるずると一度に根まで入るとひとしく、見かけはさもなき一物なれど、俗にいう麩魔羅なれば、中で玉門一杯に増え広がれば、

 

 麩魔羅は陰門の中で大きくなるようだ。

 

【図】女が陰茎をほめる『好色梅の縁』(不明)、国際日本文化研究センター蔵

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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