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欧米に「ホストクラブ」はない⁉︎ 日本だけで異常に発展した理由 「男尊女卑」が背景?

世界の中の日本人・海外の反応


昨今、社会問題となっている「悪質ホスト問題」。実は、ホストクラブは欧米にほとんど存在しない。ホスト文化が日本でのみ、異常に発展しているものということをご存じだろうか? なぜ日本でだけ発展してきたのか、ホストクラブの起源を振り返りつつ考えてみたい。


 

■高度成長期に生まれた「女性専用の娯楽施設」

 

歌舞伎町

 

 悪質なホストクラブによる被害の拡大を受け、腰の重い行政もようやく動き出した。厚生労働省HPの「悪質ホストクラブ対策について」というページの冒頭は、「現在、いわゆるホストクラブの利用客が、高額な利用料金の売掛による借金を背負い、その返済のために売春する等の事例が生じています」という注意喚起の一文で始まる。

 

 実のところ、悪質なホストクラブによる被害というのはほとんど日本だけで見られる社会問題で、ホストクラブそのものからして、海外で働く日本人女性を対象にした2、3の例外を除き、日本以外では例を見ない代物だった。

 

 ホストクラブの歴史は、高度成長期ただ中の1965年、東京駅の八重洲口前に女性専用の娯楽施設「ナイト東京」がオープンしたことに始まる。

 

 正確を期するなら、そこには以前、「京の花」というグランドキャバレーがあった。グランドキャバレーとは、数十人から百人超のホステスを有し、生バンドの演奏とダンスホールを備えた大型で豪華絢爛なキャバレーのこと。

 

「京の花」は経営難から、大胆なリニューアルに打って出た。女性経営者や高給取りの女性、ゆとりのある主婦などをターゲットにしたのである。接客のメインはホステスだったが、顧客が女性だけであれば、社交ダンスの相手をする男性ダンサーが不可欠となる。

 

 そのため「ナイト東京」では一か月あたりけっこうな場所代の支払いを条件にダンサー志願者の入場を認め、彼らは女性からのチップを収入とし、求められれば着席して飲食と会話の相手もした。

 

 そして、1971年に開業した「クラブ愛」こそ、現在のホストクラブの原型となった店だった。海外でこれに類したものを探したところで、ストリップ・クラブくらしか思いつかないが、彼らストリッパーは服を脱ぎ、際どいダンスを見せるのみで、接客をすることはないから、ホストクラブの海外版には当たらない。

 

 つまり、海外にはホストクラブに該当する業態はおろか、類似する業態も皆無なわけだが、なぜ皆無なのか。なぜ日本でだけ娯楽の一分野として確立されたのだろうか?

 

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島崎 晋しまざき すすむ

1963年東京生まれ。立教大学文学部史学科卒業。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て、現在、歴史作家として幅広く活躍中。主な著書に『歴史を操った魔性の女たち』(廣済堂出版)、『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』(日本文芸社)、『仕事に効く! 繰り返す世界史』(総合法令出版)、『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『覇権の歴史を見れば、世界がわかる』(ウェッジ)など多数。

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