×
日本史
世界史
連載
ニュース
エンタメ
誌面連動企画
歴史人Kids
動画

「女にうつつをぬかした」と激怒⁉ 男色相手を惨殺した徳川家光の「残酷な所業」とは

炎上とスキャンダルの歴史

■家光の「男性不信」の隙をついて世継ぎを産ませようとした春日局

 

 この時期の家光には、不仲だった正室・鷹司孝子がいた以外、側室はいません。しかし、家光の男色の恋人としては、酒井重澄だけでなく、先述の堀田正盛、安倍忠秋(あべただあき)、安倍重次(あべしげつぐ)といった面々がいました。現代的な感覚では、彼らが女性とも関係し、子供をもうけたところで、家光がそれを責められる筋の話ではない気もしてしまいます。

 

 しかし、酒井重澄の改易と変死の逸話を、家光が16歳の時、恋人男性が浮気した現場を目撃し、斬り殺した事件の逸話と並べて解釈してみると、少なくともこの当時の家光は、男性に抱かれる側の男性だったのではないか、というようなことを筆者は考えてしまうのです。

 

 そうすると、仮病を使ってまで家光との性関係を拒み、隠居していた2年の間に女たちと遊び戯れ、子供をもうけていた酒井重澄に、家光が本能的に感じたすさまじい怒り、嫉妬、そして嫌悪もなんとなく理解できる気はしますね。

 

 家光の心に「男性不信」が生まれたのを見逃さなかったのが、彼の乳母の春日局(かすがのつぼね)で、酒井重澄の事件の3年後、最初の側室・お振(ふり)の方が大奥に迎え入れられ、さらにその3年後、尼の身から強制的に還俗させられ、大奥に入ったお万の方が登場することになります。それでも家光が最初の子を授かったのは、彼が33歳の時でした。

 

 同性愛は認めるが、お世継ぎを授かってからにして……という、昔の日本のルールもなかなかに厳しいものです。

  

 

KEYWORDS:

過去記事

堀江宏樹ほりえひろき

作家・歴史エッセイスト。日本文藝家協会正会員。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。 日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)、近著に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)、『こじらせ文学史』(ABCアーク)、原案・監修のマンガに『ラ・マキユーズ ~ヴェルサイユの化粧師~』 (KADOKAWA)など。

最新号案内

『歴史人』2025年11月号

名字と家紋の日本史

本日発売の11月号では、名字と家紋の日本史を特集。私たちの日常生活や冠婚葬祭に欠かせない名字と家紋には、どんな由来があるのか? 古墳時代にまで遡り、今日までの歴史をひもとく。戦国武将の家紋シール付録も楽しめる、必読の一冊だ。