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【龍馬像をカラー化】プロとAIで結果はどう違うのか?

彩色写真家・山下敦史氏と考察するAI(人工知能)の可能性

■人間のプロがカラー化する場合は大きく4つの工程で彩色

 

 山下氏によれば、カラー化の手順はおおまかに4つの工程を経て進められる。

 

 まずステップ1として、もともとの画像をカラー化に最適な階調に整える。これは、強すぎるメリハリを穏やかにし、黒く潰れてしまったところに隠されているディテールを浮き彫りにさせる効果があるという。そうした上で、画像に付着している傷やゴミをきれいに取り除いていく。取り除かなければ、余計なものにまで彩色してしまうことになるからだ。

ステップ1:前ページの原版の状態から、光の階調をカラー化に最適なものへ整える

 次に、陰影に合わせて、寒色・暖色を区分けしていく。こうすることで、単なるモノクロ画像が現実味を帯びて見えてくるという。イメージとしては、単純なモノクロ画像に比べて、セピア色の画像の方が親近感を持って見られるのと同じ理屈だ。これがステップ2となる。

ステップ2:寒色・暖色を区分けしていく

 そこからおおよその色をつけていく。例えば、着ているのが紋付であるから、上半身の服は黒に統一しておいて、光源の方向から予測される色を細かく調整していく。袴にも強い光が当たっているから、光の加減を考慮して推測した色をつける。ここまでがステップ3だ。

ステップ3:光源の方向から予測しながら、おおよその色をつけていく

 そうして彩色されたカラー写真を彩色監修者が確認し、事実関係をもとにした指摘を行なっていく。画像を解析した上で塗られた色と、歴史研究によって確認されている色との整合性をつけていくことになる。これが最終段階のステップ4だ。

ステップ4:彩色監修者の確認のもと、考証に基づいた修正を加えた上で完成

 今回の画像についていえば、龍馬が腰に差している短刀に付属している下緒について、山下氏は当初、「小豆色」と推測して彩色した。「明度」から導き出される色の中で、当然、あり得る色だったわけだが、監修を務めた時代考証家の山村竜也氏から「小豆色である例はあまりなく、根拠に欠ける」との指摘を受け、修正された。

 

 また、龍馬の肌の調子を山下氏はやや浅黒く表現。これについては、山村氏も「龍馬は色黒であったと伝わっている」として、史実と合致していると太鼓判を押した。こうして、彩色のプロの分析結果と歴史の専門家の研究成果が、擦り合わされていくことになる。

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過去記事

小野 雅彦おの まさひこ

秋田県出身。戦国時代や幕末など、日本史にまつわる記事を中心に雑誌やムックなどで執筆。近著に『「最弱」徳川家臣団の天下取り』(エムディエヌコーポレーション/矢部健太郎監修/2023)、執筆協力『歴史人物名鑑 徳川家康と最強の家臣団』(東京ニュース通信社/2022)などがある。

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