「ファシズム」体制とはどのようにはじまったのか?
今月の歴史人 Part.3
ファシズムとは、第一次世界大戦終戦直後から第二次世界大戦時までの四半世紀にわたり、主にイタリアのファシスト党、ドイツのナチ党がしいた政治体制や思想のことである。他国とは異なるこのファシズム体制はいかにしてはじまり、いかにして広まっていたのか、ここではその経緯を追う。
■ファシズムの台頭・ドイツとイタリアのファシズム政権

1938年に日独伊三国防共協定を宣伝する目的で作られた、プロパガンダはがきで、「仲よし三國」と銘打たれている。この防共協定は、後に日独伊三国同盟に発展する。
後に「三国同盟」を組む日独伊の枢軸国陣営で、最初にファシズム政権が誕生したのはイタリアである。
1919年、ムッソリーニは復員軍人を主体に戦闘ファッシを結成した。1921年の総選挙で35名の当選者を出した戦闘ファッシは、国家ファシスト党に改組。以後、軍部や大資本家と手を結び、次々と地方都市の行政権をい、1922年10月、ムッソリーニがナポリで政権奪取を宣言した。武装私服の黒服隊が集結し、ローマ進軍を開始。ファクタ内閣は進軍を阻止するために戒厳令を要請したが、国王がこれを拒否したため、無血でローマ進軍を果たし、ファシスト政府が成立した。
ドイツでナチスの前進であるドイツ労働者党が結成されたのは、戦闘ファッシと同じ1919年である。翌年、ナチスと改称し、1921年からヒトラーが指導者となった。ナチスは暴力的な突撃隊の街頭闘争によって勢力を増し、1923年のミュンヘン一揆の失敗で党が非合法化、ヒトラーも投獄されたが、1925年にヒトラーの出獄とともに大衆政党として再出発した。
ナチスは大恐慌で没落した中産階級や農民の支持を獲得し、1932年の総選挙で第一党に躍進。翌年に政権を掌握し、国会で全権委任法を可決させ、独裁体制が確立した。
監修・文/水島吉隆