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神木隆之介が借金返済に奮闘する若殿を好演! 歴史エンターテインメント映画『大名倒産』

歴史を楽しむ「映画の時間」第33回


思いがけず一国の殿様となった主人公を待ち受けていたのは、多額の借金! 完済するか、切腹するかーー予期せぬ展開に翻弄される“巻き込まれ系プリンス”と、個性豊かな仲間たち。映画『大名倒産』は、そんな登場人物たちのコミカルな奮闘ぶりやハートフルな人間模様を描いた、エンターテインメント作品だ。


 

■ベストセラー作家・浅田次郎の同名小説を実写映画化

© 2023映画『大名倒産』製作委員会

 

 映画『大名倒産』の原作は、ベストセラー作家・浅田次郎の同名小説。2019年に単行本が発売されると、その愉快痛快な物語が瞬く間に話題に。実写映画化にあたって、浅田からは、脚本開発の快諾とともに「映画ならではのスケール感を!」とのリクエストがあったという。

 

 越後・丹生山(にぶやま)藩の鮭売りとして、平凡ながら幸せな人生を歩んできた主人公・小四郎(こしろう)は、ある日突然、徳川家康の子孫だという衝撃の事実を告げられる。庶民から丹生山藩当主へと華麗なる転身……と思いきや、なんとそこには25万両(=約100億円)もの借金が! 先代藩主・一狐斎(いっこさい)は、藩を救うために“大名倒産”という策を吹き込むが、実は全ての責任を小四郎に押し付け、切腹させようという魂胆だったーー。自らの命と藩を救うため、小四郎は仲間たちと借金返済に奔走することになる。

 

■国民的俳優・神木隆之介ら、超豪華キャストが集結!

 

© 2023映画『大名倒産』製作委員会

 

 主人公・松平小四郎(まつだいら・こしろう)を演じたのは、現在放送中のNHK連続テレビ小説『らんまん』でも主演を務めている国民的俳優・神木隆之介(かみき・りゅうのすけ)。まっすぐで愛すべき若殿を生き生きと演じ、物語の世界へと誘い込んでくれる。小四郎が、次々に迫り来るピンチに慌てふためきながら立ち向かう姿は、親近感たっぷり。その一方で、彼の立場の変化に伴う葛藤や成長も、しっかりと説得力を持たせて見せる表現力は見事だ。脚本にはない、さりげないひと言をプラスして、小四郎のキャラクターを際立たせ、現場を感嘆させたシーンもあるのだとか。

 

 また、物語を彩る登場人物たちを演じた面々も、超豪華! 小四郎の幼なじみの町娘・さよ役に、杉咲花(すぎさき・はな)。うつけ者だが庭造りの才能豊かな兄・松平新次郎(まつだいら・しんじろう)役に、松山ケンイチ(まつやま・けんいち)。育ての父・間垣作兵衛(まがき・さくべえ)役に、小日向文世(こひなた・ふみよ)。生真面目な家臣・磯貝平八郎(いそがい・へいはちろう)役に、浅野忠信(あさの・ただのぶ)。そして、実父で先代藩主の一狐斎役に、佐藤浩市(さとう・こういち)……と、まさに日本を代表する俳優陣が顔を揃えた。

 

 小四郎とさよとのやりとりに和んだり、一狐斎との対峙に引き込まれたり、仲間たちとのチームプレイに元気をもらったり。冒頭からエンディングまで、名優たちの熱演をノンストップで楽しめるのが、今作の大きな魅力だろう。

 

■不変のテーマを自由に描くことで万人の心に響く作品に

 

© 2023映画『大名倒産』製作委員会

 

 監督を務めたのは、映画『老後の資金がありません!』『そして、バトンは渡された』などで注目を集めた、前田哲。今回、初めて時代劇を手がける中では、長年時代劇に携わってきたキャストやスタッフと意見交換をしながら、ギリギリまで“遊び”を取り入れたそうだ。

 

 今作のテーマは、“若者へのエール”。前田は、原作の小四郎に、今求められているリーダー像を見出したという。「力が強いわけでも、頭が切れるわけでもない、庶民とともに育った小四郎が、リーダーとして逞しく成長していく姿を描くことで、今を生きる若者へエールを送りたかった」――時代を越えて共感できるストーリーは、若者はもちろん、万人の心に響くはずだ。

 

© 2023映画『大名倒産』製作委員会

 

 また、作品のモチーフが、今も昔も我々の生活と深く結びついている“お金”であることも、感情移入しやすい理由の一つ。劇中で小四郎たちが取り組む“節約プロジェクト”には、現代のブームと重なるものも! 今でいうリサイクル、キャンプ、シェアハウス、サブスクリプション……など、令和の日常に身近なワードが続出するのが面白い。時に楽しみ、時に戸惑いながら、工夫や努力を重ねていく小四郎や仲間たちを、ぐっと身近な存在に感じることができるだろう。

 

 江戸時代を舞台に、現代にも通じる人間ドラマを、自由に柔軟に描いた『大名倒産』。王道でありながら新鮮、壮大でありながら軽快、と、多彩な魅力を併せ持つ作品になっている。歴史好きや時代劇ファンはもちろん、そうではなくても、大人から子どもまでみんなで笑ってハッピーになれる、にぎやかで華やかな一本だ。

 

【映画情報】
623日(金)全国公開
『大名倒産』

原作/浅田次郎『大名倒産』上・下巻(文春文庫刊)
出演/神木隆之介 杉咲花 松山ケンイチ 小日向文世  小手伸也 桜田通 宮﨑あおい 浅野忠信 佐藤浩市
監督/前田哲

<公式サイト>https://movies.shochiku.co.jp/daimyo-tosan/
© 2023映画『大名倒産』製作委員会

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藤本幸授美ふじもとこずみ

ライター・インタビュアー・コラムニスト。2000年、雑誌『non-no』(集英社)の専属ライターとして活動開始。2005年、独立。雑誌・書籍・WEBなどで、インタビュー記事やカルチャー紹介を中心に、ライフスタイル全般に関する読み物を執筆。俳優・アイドル・アーティストほか第一線で活躍する著名人から、様々な世界で生きる一般人まで、1500人以上の取材を行う。現在は、雑誌『LEE』(集英社)などで連載を担当中。

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