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いわゆる”親子丼”のことを「芋田楽(いもでんがく)」といった【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語㊴


本記事では現代では使われていない「江戸時代の性語」を紹介していく。


 

■芋田楽(いもでんがく)

 

 男が、女とその母親のふたりと性的関係を持つこと。

 

 里芋を串に刺し、味噌を塗って火であぶったものが芋田楽だが、親芋と子芋を一本の串でつらぬくことからの連想であろう。

 

 図は、義母(妻の母)との芋田楽である。

 

【図】義母と芋田楽(『恋相撲四十八手』歌川国虎、文政七年、国際日本文化研究センター蔵)

 

(用例)

①春本『帆柱丸』(喜多川歌麿、享和元年)

 

 男はこれまで関係のあった女の妹と、新たに関係を持つ。

 

男「ぼぼを、姉妹ながらとぼすというは、俺もよっぽど果報者だ」
女「姉さんより、わたしがほうが、ちっとは味が新しかろうね」

 

 母と娘ではないが、姉と妹の芋田楽である。

 

「とぼす」は性交のこと。

 

②春本『恋相撲四十八手』(歌川国虎、文政七年)

 

 女は、自分の娘の夫に腰を揉ませていたが、

 

「可愛い娘の亭主だから、一緒に寝てもいいわな。手をここへやんな」
 と、毛ぎわへ手を持ち添えてあてがう。

 

 男の手を陰門に導いた。

 

 男は、女房の母と芋田楽をすることになる。

 

③春本『口吸心久茎後編』(歌川国芳、文政十二年)

 

 勘平は、女房の母親とも通じていた。女房は、亭主が自分の母と性交している現場を見て、怒る。

 

「これはしたり、勘平さん、非義非道のことをして、身の楽しみにしようとは、あんまりわたしを踏みつけな。親同然の姑(しゅうとめ)をとぼし、わたしの見る前で、親子を一緒にとぼすとは、大々々の雁高大槍(かりだかおおやり)で、芋田楽の古商い、かかさんも、かかさんだ、あんまりじゃねえ、もも……」

 

「雁高大槍」は、亀頭の大きい、大魔羅のこと。

 

④世相集『藤岡屋日記』(藤岡屋由蔵編)

 

 嘉永三年(一八五〇)のこと。お琴という三十八歳の後家が、自分の娘に十九歳の弁之助を婿(むこ)にしようと、たくらんだ。

 

 これは弁之助を表向きの婿に致しおき、内証は、おのれが楽しみにいたし、いも田楽の目論見なり。

 

 女の方から、芋田楽をたくらんだのである。

 

 お琴は、自分の娘の亭主とひそかに楽しむつもりだった。

 

 もちろん、事件に発展する。

 

⑤春本『会本婦女録嘉遷』(歌川国丸)

 

 男は、自分が関係のある女がまだ寝ているのをさいわい、娘に手を出す。母と娘の芋田楽である、

 

女「かかさんに知れても、もう、もう、いといませぬ」
男「ここのお袋の寝坊も、こういう時はまた人助けになるわえ。どうして、かかあのより、おめえの方が上塩梅(じょうあんばい)だ」

 

 男は、母親より娘の陰部の方が味がいいとうそぶいている。

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、図説吉原事典(朝日新聞出版)、江戸の性語辞典(朝日新聞出版)など。

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