パールハーバー攻撃を狙った「日本海軍艦上機トリオ」の特徴と性能
アメリカ太平洋艦隊の一大根拠地を叩いた奇襲作戦にまつわる航空エピソード【第3回】
真珠湾攻撃を参加した海軍機は「艦戦」、「艦爆」、「艦攻」の3機種が存在した。その特徴、性能、搭載する兵器の種類・用途などをわかりやすく解説する。

パールハーバー奇襲の主役となった97式艦上攻撃機。使い勝手のよい優秀な機体で、雷撃、水平爆撃、偵察、対潜哨戒などに重宝された。
空母に搭載できる航空機は「艦上機(かんじょうき)」と総称される。そして第二次世界大戦時に空母を保有した各国は、原則として「艦上戦闘機(略して「艦戦」)」、「艦上爆撃機(同「艦爆」)」、「艦上攻撃機(同「艦攻」)」の3機種を搭載していた。
このうちの艦戦は空戦を行い、敵の爆撃機や攻撃機から味方の艦隊を守る艦隊防空と、味方の艦爆や艦攻を敵の戦闘機から守る護衛を任務とした。日本海軍航空隊における開戦時の機種は、かの「ゼロ戦」こと零式艦上戦闘機である。
なお大戦中盤以降、大馬力エンジンが実用化できたアメリカは、艦戦にもかかわらず艦爆をしのぐ爆弾搭載量を誇るグラマンF6FヘルキャットやヴォートF4Uコルセアなどを実用化し、艦戦でありながら艦爆の代行もはたすことができるようになった。
艦爆は、命中精度が高い急降下爆撃を行う機種で、開戦時は99式艦上爆撃機が用いられていた。だが同機は250kg爆弾しか搭載できなかったため、戦艦の分厚い装甲を貫徹する爆撃は難しかった。
艦攻は、対艦攻撃の主役ともいうべき機種で、航空魚雷を用いた雷撃に加えて、大重量の大型爆弾による水平爆撃で戦艦にも打撃を与えることができた。開戦時には97式艦上攻撃機が用いられていたが、本機がパールハーバー奇襲における戦艦攻撃の主力であった。
ところが、ここにきて既述した航空魚雷と爆弾の性能が問題となった。
ごく簡単にいうと、船を沈めるには水線下に穴を開けて中に水を入れてしまうのが最良の方法である。ゆえに魚雷は対艦兵器の主役だった。中でも航空魚雷は、特に航空機への搭載を考えて若干のスペックダウンを忍んで軽量化されており、97式艦攻に1本を搭載できた。
航空機から魚雷を投射すると、重い魚雷はいったん深く沈み込み、それから駛走(しそう)水深へと浮上してくる。ところが水深が浅いと、沈み込んだ魚雷が海底に突き刺さってしまう。
実はパールハーバーの平均水深は12mしかなく、当時、日本海軍が使用していた91式航空魚雷を規定の投射高度である100mから投射すると、実に水深50~60mまで潜行し、それから定深度まで浮上して目標へと駛走するので、普通に考えれば雷撃は不可能であった。