天下人・ヒデヨシくんが「長引くウクライナ侵攻」を斬る!─戦国三大天下人が現代に転生⁉─
三大天下人が“今”を斬る【第六回】
ノブナガくん、ヒデヨシくん、イエヤスくん。かつて戦国乱世を制覇し、天下人となった3人の戦国武将が“現代に蘇り、時勢について語ったら”……。はたしてどんなことを語るのだろうか? 今回はヒデヨシくんに「長引くウクライナ侵攻」について語ってもらった。
■引きに引けない戦いは「兵の士気」を下げてしまう……⁉
お歴 司会の“お歴”です。三大天下人が現世に舞い降りて、現代のニュースを語らい、率直な意見を披露する『3大天下人くんが今を斬る!』。今回はヒデヨシ様に語ってもらいます。
ヒデヨシくん 近頃、どうしても気になることがあるのだがや。
お歴 急にどうしたんですか、ヒデヨシ様。
ヒデヨシくん ロシアのウクライナ侵攻のことだがや。
お歴 この前、ノブナガ様が切々と語られていましたね。
ヒデヨシくん なんか、こう、わしの戦国時代にやった愚行をなぞっているような気がするでよう。
お歴 もしかしてヒデヨシ様も、ウクライナに攻め込んだことがあるんですか?
ヒデヨシくん そんなわけあるかい!あんな地球の裏側にあるようなところへ戦いにいくなんて、戦国時代の移動技術では無理じゃ!
お歴 まあ、裏側というのは大げさですが、確かに日本からは離れているのは事実ですね。
ヒデヨシくん ウクライナではのうて、わしが、晩年に仕掛けた文禄・慶長の役のことだが……。いわゆる朝鮮出兵じゃ。
お歴 ありましたね。
ヒデヨシくん 当時、明(中国)は国力が弱っておってな。破竹の勢いで日本を統一したばかりのワシならば、もしかしたらイケると勘違いしてしまったのだ。

ヒデヨシくん
お歴 当時、中国は弱っていたんですね。
ヒデヨシくん ノブナガ様は、日本を統一した後にアジア統一という壮大なる野望を胸に秘めていたことをわしは知っておったんだがや。それに、日本を統一した後、手柄を立てた者にどう褒美をとらせたらよいのかもわからなくなっておったからなあ。ノブナガ様のように、茶道具を下賜したり、朝廷の位である官位を与えたりしたが、これでは腹は膨れないからのう。褒美で貰うなら、米がいっぱい採れる土地がいいのう。でもな、わしはひとつ勘違いをしておったんじゃ。
お歴 勘違いですか⁉
ヒデヨシくん 明がどえりゃーでかい国だということを忘れておったのじゃ。わしの時代は日本の造船技術が未熟で、大海の荒波を蹴立ててスイスイと進むような船を造ることはできなんだ。そのため名護屋(佐賀県鎮西町)から島伝いに朝鮮半島を通って行く方法を考えたのだがや。
お歴 そもそも朝鮮半島を占領することが目的ではなかったのですね。
ヒデヨシくん 明だがや。最初は、小西行長(こにしゆきなが)が釜山(プサン)上陸とともに行った猛攻に、相手も驚いたんだろうなあ、あっという間に、城を落としてしまったんじゃ。
お歴 すごいですね。
ヒデヨシくん 行長のやつ、兵を鍛えておったからなあ。相手もいきなり攻撃されてびっくりしたのだろう。その勢いで、朝鮮半島を北上したのだ。その進撃は見事なものだったぞ。相手は行長の攻撃を知って、朝鮮軍は首都・漢城(カンジョウ)を放棄して平壌(ピョンヤン)に移っていたから、簡単に漢城を占拠することができた。そして、なんとロシア国境間近のところまで行ったのだ。
お歴 それから、それから。
ヒデヨシくん ところが、明の援軍が出て来た上に、物資の補給に滞りが出てのう……。腹が減ったら戦はできぬ。輜重(しちょう/軍の兵器や食料を手配すること)については治部少輔(石田三成/いしだみつなり)に任させておけば大丈夫と思ったのだがや。
お歴 三成さんの仕事ぶりに何か落ち度があったんですか?

お歴
ヒデヨシくん いやいや、こういうことにかけてはやつは天才じゃ。だがなあ、海路を絶たれてはのう……。まあ、碧蹄館(へきていかん)を陥落させたし、一定の戦火を挙げたので、これでよしとして停戦することにしたのだがや。
お歴 今までのお話は文禄の役ですね。
ヒデヨシくん そうだがや。だが、停戦交渉で、難航してのう。明がわしのことを日本国王とは認めてくれんでのう。停戦をやめたのだがや。ちょうど朝鮮水軍を指揮していた李舜臣(りしゅんしん)が失脚した時期と重なって、我が水軍が勝利を収めた。これがいかんかったぞなもし。
お歴 どういうことですか?
ヒデヨシくん わが軍が深みにはまってしまったというか、戦いをやめられなくなってしまったのじゃ。いいとこまでいってしまったから引けなくなったのじゃ。この後、苦戦を強いられるようになってしまった。今のロシアがそうじゃろう。完全に停戦するタイミングを失っておる。そもそもあの土地が欲しいからといきなり隣国に攻め入ったことが間違いの始まりだが、停戦交渉を蹴とばさずにおればよかったかも思うぞなもし。負ければ悔しくて反撃してしまうが、勝てないと士気は低下する。最後の方は嫌々、戦っておったのだろうなあ。
お歴 それで、ヒデヨシ様が亡くなるまで続いたと。
ヒデヨシくん そう、発起人がいなくなったのだから、だれもやりたくないじゃろ……。やっと戦いをやめることができたのだがや。中にはやっと日本に帰ることができると喜んだ者もおったに違いない。

ヒデヨシくん
お歴 撤退も早かったですよね。
ヒデヨシくん ああ、まあ、みんなの本音じゃろうな。まあ、李舜臣に少し邪魔はされたものの、大した混乱はなかったようだ。わしのようにならなければよいがのう。
※この記事はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。