ユンカースJu87カノーネンフォーゲル[独軍]vs.イリューシンIl2シュトロモヴィーク[ソ軍]【独ソ兵器対決】
独ソ戦で戦った戦車から拳銃まで ~その評価は~ 第6回
強力な装甲防御力を有した独ソ両軍の戦車を空から攻撃した地上攻撃機を取り上げ、その誕生の背景、性能、戦歴を解説する。

編隊飛行中のイリューシンIl2シュトロモヴィーク。本機は、実戦においてさらに低い高度で飛行することが多かった。そのため、対空射撃によって撃墜される機体も少なくなかった。
ユンカースJu87は急降下爆撃機として開発された機体で、シュトゥーカと呼ばれた。なお、シュトゥーカとは「急降下爆撃機」を意味するドイツ語の略称であり、本来はJu87固有の愛称ではなかったが、すぐに本機の愛称的に用いられるようになった。
地上の敵に恐怖感を抱かせるため、急降下時に空気を受けて作動するサイレンを装備。この風切り音は「ジェリコのらっぱ」と呼ばれ、大戦初期に連合軍将兵に恐れられた。
しかしJu87は低速で、大戦中期以降、西方戦線においてはアメリカやイギリスの戦闘機に撃墜されることが多くなった。だが東部戦線では依然有効な機体で、ソ連地上部隊に大きな損害を与え続けた。
やがてソ連軍戦車の脅威が高まると、このJu87の左右の主翼の下に37mm機関砲をそれぞれ1門ずつ、計2門搭載した対戦車攻撃機が開発された。大口径機関砲を搭載しているので「カノーネンフォーゲル(大砲鳥)」というニックネームを付与され、シュトゥーカのエースで「ソ連人民最大の敵」」と呼ばれたハンス・ウルリッヒ・ルーデルなどは、本機に乗って戦車500両以上、その他の車両800両以上を撃破という大戦果をあげている。
一方、ソ連軍は地上襲撃機イリューシンIl2シュトロモヴィークを大量生産して対地攻撃に重用した。エンジン周りやコックピットに重装甲が施された本機は、Bf109やFw190といったドイツ戦闘機の機関銃弾を、口径と弾種によっては弾くほどであった。超低空飛行を得意とし、対戦車用の小型成形炸薬爆弾やロケット弾を用いて、地上のドイツ軍に大きな損害をもたらした。
カノーネンフォーゲルは第二次大戦が終了すると使われることはなかったが、Il2のほうは戦後も使用が続けられ、朝鮮戦争にも投入されている。なお、シュトロモヴィークとはロシア語で「襲撃機」という意味であり、Il2に与えられた固有の愛称なわけではない。