フォッケウルフFw190[独軍]vsラヴォーチキンLa7[ソ軍]【独ソ兵器対決】
独ソ戦で戦った戦車から拳銃まで ~その評価は~ 第3回
地上戦だけでなく、激しい空戦が繰り広げられた独ソ戦。今回は独ソ両軍の主力戦闘機を取り上げ、その性能、戦歴を徹底比較。

フォッケウルフFw190D-9の初期型。Jumo 213 A-1エンジンが収められた機首の長さがよくわかる。胴体下面に懸吊されているのは300l入り増槽。
ソ連のOKB-301設計局(のちにラヴォーチキン設計局に改名)は、1150馬力のクリモフ M-105PF液冷V型12気筒エンジンを搭載したLaGG-3戦闘機を開発し、同機は独ソ戦勃発時、新型機として空軍への配備が始まっていた。
しかし戦時下の技術進歩は速く、LaGG-3はすぐに性能不足となってしまった。だがクリモフ M-105PFよりも大馬力(1300馬力)のシュベツォフASh-82空冷星型エンジンが開発されたため、同機のエンジンを換装して各部を改設計したLa-5戦闘機へと生産が転換された。
ところがこのLa-5も近々の性能不足が見込まれたため、それを見越して性能向上が図られることになったが、完全に新しいエンジンはまだ開発できていなかった。そこでASh-82の改良型であるASh-82FNを搭載し、機体各部の空力学的設計の改善と重量軽減が施されたLa-7が生み出され、大戦後半に実戦へと投入された。
一方、ドイツ空軍は独ソ戦開始時、メッサーシュミットBf-109とフォッケウルフFw190の2機種の単座戦闘機を運用していたが、後者は配備が始まったばかりであった。そしてソ連の場合と同様に、戦争の進捗にともなって、両機の性能向上が図られることになった。
だがBf-109は設計上のマージンが少なく改良に「天井」がある一方で、逆にFw190には「伸びしろ」があったため、いろいろと手が加えられることになった。
特に、それまでの空冷星型エンジンをJumo 213 A-1液冷12気筒エンジンに換装し、機首を50cm、胴体後部も49cm延長して、全長を約9mから約10mへとストレッチ。垂直尾翼も大きくしたFw190D-9は、著しく性能が向上した。
このFw190D-9は、Jumo 213 A-1を搭載したため機首が長くなり、ドイツ軍でのアルファベットの「D」のフォネティックコードである「ドーラ」に、ドイツ語の長っ鼻を意味する「ラングナーゼン」を組み合わせて「ラングナーゼンドーラ(長っ鼻のドーラ)」のあだ名で呼ばれた。
La-5とFw190D-9の空戦は、低高度であれば前者、高高度であれば後者が性能的に有利だったものの、両機の性能差は、大前提となるパイロットの技量の良し悪しによってカバーできる程度のものだった。
ただ、Fw190D-9はドイツ本土空襲に飛来するB-17やB-24のような重爆撃機の迎撃に多用され、東部戦線での空戦の中心的な機体となっていたわけではなかった。