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【江戸の性語辞典】つびは湯上りが、まらは酒を呑んだときが最高を意味した言葉とは?

江戸時代の性語⑩


今見れば、予想がつかない意味で話されていた言葉や現在とはまったく異なる意味で使われていたものなどが江戸時代の言葉の中にはある。性に関する言葉もしかり。現代まで使われているもの、意味が変化したもの、まったく使われなくなったものなど様々。ここでは江戸で使われていた性にまつわる言葉を紹介していく。


 

■湯つび酒まら(ゆつびさかまら)

 

 女性器(つび)は湯上りが最高、陰茎(まら)は酒を呑んだ状態が最高、と言う意味。

 

「湯ぼぼ酒まら」という言い方もあり、同じ意味である。「ぼぼ」は女性器のこと。

 

 湯上りの女は、女性器も湯で温まって血行がよく、感度がよくなるからだろうか。

 

 男の場合は、酒の酔いで早漏傾向が改善されるからであろう。ただし、適度な酔いである。深酒をすると、不能状態になりかねない。

 

<図>武家屋敷の内風呂
『新増補西国奇談』(為永春水二世著、安政三年)
国立国会図書館蔵

 

【用例】

①春本『会本何賦枕』(勝川春章、天明三年)

 

 水風呂は「すいふろ」と読み、現在の風呂のこと。蒸し風呂と対比した言い方である。

男女が風呂場で情交している。

 

男「水風呂(すいふろ)で燗をしたから、もうもう、味のよさ。さりとは、奇妙なよいぼぼがあるもんだ」

女「このようなよいことは、わたしも今まで覚えぬ。それそれそれ、またいくよ」

 

 女は湯につかったため、湯ぼぼ(湯つび)になったということであろう。感度がよくなっているようだ。

 

 

②春本『会本恋濃男娜巻』(喜多川歌麿、寛政十一年)

 

 湯上りの女房に、さっそく亭主がいどむ。

 

「てめえが湯を使っているうち、俺が酒を呑んだから、これで湯つび酒まら、鬼に金棒、どうだ、妙か、妙か。とかく何事も、昔の人の言い置いたことはいいわえ」

 

 

③春本『婦美の清書』(鳥橋斎栄里、享和元年)

 

 風呂場で真っ裸になり、性行為をしている男女。

 

 男「湯ぼぼは、また格別いい。湯を使って、またあとでしよう。それそれ、俺もいくよ」

 女「きょうは誰もいねえから」

 

 当時、内風呂があるのは、武家屋敷か大きな商家ぐらいである。ふたりは、屋敷の留守番を頼まれたのだろうか。

 

 ふたりきりなのをさいわい、日ごろはできない、風呂場のセックスが実現した。

 

 

④春本『仮枕浮名の仇波』(仮名垣魯文著、安政元年)

 

 男が酒を呑んでいるのを見て、女がさそう。

 

「おや、お酒はあとでも呑めるはねえ。ええ、じらすから、悔しいよ」

「たとえにも、湯開酒陽物(ゆぼぼさかまら)と言うから、とてものことに、よくしてあげるのだよ」

 

 男は「酒まら」にしようとしていた。女へのサービス精神である。

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、図説吉原事典(朝日新聞出版)、江戸の性語辞典(朝日新聞出版)など。

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