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テレビと劇場、同時期に公開! 藤沢周平原作の時代劇『殺すな』

歴史を楽しむ「映画の時間」第27回 


時代小説の名手・藤沢周平原作の時代劇『殺すな』ーー。先日、亡くなった名匠・井上昭監督の遺作となった本作は、テレビ放映と劇場上映を史上初、ほぼ同時に展開することでも話題を集めている。一緒に暮らす吉蔵に「この橋を渡ったら殺すぞ」と言われたお峯はどんな選択をするのか……。江戸の橋のたもとで繰り広げられる、3人の男女の喜怒哀楽の物語を紹介する。


藤沢周平原作、名匠・井上昭監督が映像化した『殺すな』

 

(C)「殺すな」時代劇パートナーズ

 

 1月28日より劇場上映される映画『殺すな』は、藤沢周平の短篇集『橋ものがたり』に収められた一篇を52分の物語として映像化したものだ。

 

 本作は、若さによって衝き動かされたいっときの情を見つめる静かな物語になっている。

 

長屋に暮らす訳あり男女とかつて妻を手に掛けたことを悔やむ浪人

(C)「殺すな」時代劇パートナーズ

 日本橋に近い堀江町の小さな船宿の女将のお峯には、十以上年の離れた婿がいた。しかし、船宿のお抱え船頭として働く吉蔵といつしか情を交わすようになり、ふたりは互いの若さから駆け落ちをして人目をしのんで暮らすようになる。

 

 世間を憚り、川向うの人気(ひとけ)が少ない町の裏店で暮らしはじめたのは数年前。ところが、ちかごろお峯の様子がおかしい。人の賑やかさ、商店の賑わいをどこか懐かしんでいる、吉蔵にはそう映っていた。吉蔵はお峯が自分の前から消えていなくなるのではないか、そればかりを気にかけることになる。

 

 だから屋根船の船頭として働く昼のあいだ、長屋の隣に住む小谷善左エ門に、お峯を見張っていてほしいと頼んだ。善左エ門は筆作りで糊口をしのぐ独り身の浪人者で、吉蔵はその仕事をお峯に手伝わせていたのだ。

 

平穏と災い、現在と過去を分ける江戸の橋

(C)「殺すな」時代劇パートナーズ

 お峯のことを気に病む吉蔵と、閉ざされた暮らしを終わらせたいお峯。そのふたりを善左エ門は静かに諭す。まるで自らの人生の過ちを顧みて、若いふたりの未来を見通しているかのように――。

 

 岸と岸とをつなぐ橋。それは、現在と過去、平穏と災い、そして男と女のこころをわたすものでもある。

 

 『殺すな』は、そのふたつの世界のあいだにある、ふつうで平凡な暮らしを自らの過ちによって失った、対岸に立つ者の呵責の物語でもある。

 

 

藤沢周平の口癖「ふつうが一番」

 

(C)「殺すな」時代劇パートナーズ

 「ふつうが一番」。それは作者である藤沢周平の口癖であり、作品においては土壌に沁み込んだ地中水のように藤沢文学を潤している。

 

 ふつうの暮らしのなかで揺れ動く喜怒哀楽を、中村梅雀が小谷善左エ門、柄本佑が吉蔵、安藤サクラがお峯としてみせる。江戸の風景とともに映し出される心模様は、いまの私たちの中にも変わらないものとして姿を見せる。だからであろう。心が揺さぶられる。

 

 

【映画情報】

1月28日(金)より全国のイオンシネマ89館にて劇場上映

2月1日(火)夜7時から時代劇専門チャンネルでTV初放送

 

『殺すな』

(C)「殺すな」時代劇パートナーズ

監督/井上昭

原作/藤沢周平「殺すな」(新潮文庫/実業之日本社『橋ものがたり』所収)

出演/中村梅雀、柄本佑、中村玉緒(特別出演)、本田博太郎、安藤サクラ

時間/52分 製作年/2021年 製作国/日本

 

公式サイト

https://www.jidaigeki.com/korosuna/

 

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隆次郎太郎りゅう じろうたろう

朝ドラ、大河ドラマを好んで観る。印象深い作品は『風と雲と虹と』『北条時宗』『澪つくし』『カーネーション』『半分、青い。』『スカーレット』。和田勉作品の『けものみち』『天城越え』も好きです。趣味は地形を味わいながらの散歩。

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